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「それで、何で機嫌が悪いのかなこの子は」


思わず呆れの溜息が零れ落ちる。典韋殿と許チョ殿はどう答えるべきか迷っている様子だし、本当に自由で我が儘な困った子だよね、なまえ殿は。


「いや、ここに来たときには既にこうで…」
「おいらから離れてくれねぇんだあ。ほらなまえ、郭嘉殿が来ただよ」
「…郭嘉?」
「聞こえていたでしょう。二人に迷惑かけないの」
「郭嘉!」
「うわっ、何」


まるで弾丸、腹部に受けた衝撃に思わず咳込みそうになる。なまえ殿も痛みを感じたのか小さく「うっ、」なんて聞こえてきた。しかし引き剥がそうものなら全力で抵抗してくるのは明確で、どうしたものかと二人に視線を送ればますます困惑させてしまう始末。迎えに来ると何時も笑っているから、これは余程の面倒とみた。


「…司馬昭馬鹿なの。賈充も言ってた」
「司馬昭殿…賈充って誰。説明不足が過ぎるよ」
「司馬昭の友達」
「そ。また急な」
「馬鹿だし嘘つき」
「…散々だねあなた」
「賈充も言ってた」
「会ったの?捜したの?」
「会った」
「ふうん」


膨らんだ頬の原因は司馬懿殿の息子、と。愚息がどうだとか言っていたのは謙遜と思っていたのだけれど、案外真面目な発言だったのかな。まあ、なまえ殿の言葉を全面的に信用出来るかと問われたらそれまでなんだけどね。


「他に何かわかるかな?」
「いや…わしらもその司馬昭馬鹿しか聞いてねぇもんですから、どうにも」
「司馬昭馬鹿、郭嘉も馬鹿の繰り返しだよ」
「私も?」


許チョ殿の言葉に続いて頬を膨らませたままのなまえ殿が睨んできた。わかるでしょと訴えているらしいけど、これっぽっちも理解が出来ないよ。司馬昭殿と何があってその賈充殿が出て来て私も馬鹿、なのかな。


「私は居合わせていなかったのだけど」
「だって、郭嘉乙女心わかってないんだもん」
「餓鬼はいるけど乙女なんていないよ」
「ほらあ!!」


可愛いお嫁さんは家事が出来ないと。そう言ったのは司馬昭殿、だったかな。



20130703

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