35

「いちごに、あとホイップクリーム!」
「なまえ殿は必要な物、わかるの?」
「砂糖とー、それから…」
「本を見た方がいいか。夕飯ついでに買うとして――…あ、曹操殿は金曜にお戻りだってさ」
「金曜日?…じゃあ、四日後?」
「そうだね。曹丕殿が言っていたよ」
「………」


不味いものでも食べたような顔。なまえ殿は本当に曹丕殿が苦手らしい。その父親が大好きでその妻も大好き、ならば兄を好いていても不思議はないのにね。心に住み着いた衝撃というのは容易く消えるものではない、そういうことだろうか。


「他の兄様はどうなの?」
「嫌いじゃないよ?」
「…曹丕殿だけか」
「でも、皆一緒に住んでるわけじゃないから。郭嘉は?」
「どうかな。長らく連絡はしていないけれど…うん、曹操殿を親のように感じることもあるし」
「父様は私の父様!!」
「例えだよ。あなたと夏侯覇殿を兄妹のようだと言うのと同じ」
「…じゃあ郭嘉は兄様?」
「え?」


親のようとは言ったけれど、それは別になまえ殿と兄妹関係になることまで考えての発言ではない。と言うよりも正直、頭になかった。曹操殿のことしか浮かべていなかったよ。


「だって、父様が父様なら郭嘉は私の兄様だよ」
「…それは御免だな」
「私だって嫌だもん!」
「そう。意見が合って嬉しいよ」
「郭嘉が兄様になったら駄目なの!」
「だからなる気ないって」
「本当っ!?」
「本当」
「本当に本当!?」
「本当だってば」


何かなその念押し。今でさえ面倒だというのに、一生付き合っていくなんて最悪も最悪じゃない。そんなところに飛び込んでいくほど軽率ではないよ。


「ならいいっ!」
「あ、そう」
「ケーキの材料買いに行く!」


ところでさ、誰に教えてもらうのかな。



20130620

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