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「いやあ、お世話になりました」
「こちらこそ。なかなか楽しかったよ」
「仲権が郭嘉のお世話したんだもんね!」
「はいはい。なまえ殿、さっさと学校行きなさい」
「や!送って!」
「夏侯覇殿と大事な話があるから無理」
「私もあるもん!」


吐き出すとなまえ殿は急かすように腕を引く。学校もだけど、私だってのんびりしている時間はないしね。そう言えば一人で行くだろうという考えは、無駄だったらしい。


「…わかったよ。夏侯覇殿も講義かな?」
「荷物置いて大学ってなると、そろそろ行かないとですね」
「そう」
「郭嘉!」
「はいはい。それじゃあ、また機会があれば」
「はい。父さんと叔父さんにも話しときます」
「それは…場合によっては私の首が絞まる、かな」
「あはは。大丈夫です、仲良くやってたって言っときますから!」
「仲良く?」
「かーくーかあ!」
「わかったって。引っ張らないの」


痺れを切らしたなまえ殿が今度は両手で引っ張り出す。この程度の力に負けるはずがない。おや、夏侯覇殿が楽しそうに笑っている。なまえ殿が好きなこと、それから父親のこと。もう何年も前の話、「腕を引っ張る息子が可愛いんだ」と夏侯淵殿は蕩ける表情で語っていたっけ。


「……可愛いかなあ…」
「何が?」


父親という称号は、手を振って歩いていく夏侯覇殿の方がお似合いだ。



20130618

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