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「曹操殿のために何かしたい、という考えには賛成だけれど」
「帰りたい?」
「そうだね」


ベンチに腰掛ける私達を尻目になまえ殿はどんどん小さくなる。いやはや、夏侯覇殿のお別れ会はどうなったのやら。頭に新しいことが入っていくとそれまでの記憶は綺麗さっぱりなくなってしまう質、なのかな。


「郭嘉殿がその反応ってのは意外です」
「そう?」
「喜々として選ぶんじゃないか、と思ってたんで」
「お戻りになったら早速飲みに誘おうか、ゆっくりと二人で語らいたい…とは思っているよ、当然」
「ま、ですよね」
「ただ、一緒に選んだところでなまえ殿はあれこれ煩そうだから。待っているのも長そうだけど」
「…血の繋がった娘ですよ?」
「曹操殿のことはとても好きだけれど、なまえ殿はどうでもいいし」
「うわあ」


私からすれば夏侯の方々や司馬夫妻は過保護だと思うよ。まあ司馬懿殿に限り、曹丕殿に圧力を掛けられたと解釈も出来るけれどね。私は曹操殿となまえ殿を同一視はしていないし、私が敬愛するのは曹操殿以外にいない。なまえ殿ではそうはなれない。とは言え、だ。


「迷子の呼出しで行くのも嫌だな…」
「確実に郭嘉殿の名前言いますね」
「…仕方ない。行こうか、夏侯覇殿」
「そうしますか!」


何だか嫌な感じの笑い方だね、夏侯覇殿。



20130616

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