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「仲権何食べたい?」
「だからななまえ、別に必要ないって――」
「だめ!お別れ会する!」
「どっかに消えていなくなるわけじゃないんだけどな…」


眠りこけたなまえ殿を寝室まで運んだ後だ、夏侯覇殿がそろそろ戻ると口にしたのは。私にしてみればああそうなんだ程度のものだけれど、なまえ殿にはそうではないらしい。知るやいなや「仲権お別れ会」を開催すると張り切りだしてこの有様。自分が騒ぎたいだけではないよね、あの子。


「ケーキいるよね、ケーキ!」
「それ自分が食いたいだけだろ」
「お別れ会だもん!」
「寂しいのかご馳走食べたいのかどっちだよ、お前は」
「ふふー」
「まったくなあ、薄情なやつめ!」


そう言って夏侯覇殿はなまえ殿の髪を掻き混ぜる。ぐしゃぐしゃにされても怒るどころか笑っているし、本当に一見は兄妹のようだ。曹操殿は二人の親しさをご存知のはずだし、これはやはり、陳羣殿の生活矯正説が有力なのかもしれないな。


「そういえば飲めるんだったね、夏侯覇殿」
「あ、はい。とっくに成人迎えてるんで」
「なら祝い酒といこうか。…いや、飲むのなんて久しぶりだなあ」
「え?いやいやいや、飲むなんて一言も――…お?」
「ん?」
「郭嘉、ケーキ!仲権がケーキ食べたいって!」
「それあなたでしょ」
「仲権も!!」


何やらピーピー言っているなまえ殿は何時も通りだからどうでもいいとして。夏侯覇殿はどうしたというのだろう、携帯を見る表情には喜びが滲んでいる。


「何かあった?」
「父さんが!」
「夏侯淵殿?」
「戻って来るそうです!」
「おや」
「父様っ!?」


弾むなまえ殿の声。うん、珍しく私も同じ気持ちだよ。



20130611

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