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「最近ご機嫌ね」

そうやって声を掛けると、足を止めた女の子は目を丸くして振り返った。この子は何時も可愛らしい格好をしているけれど、このところは見覚えのない、普段とはまた違った服を着ている。

「こんにちは」
「こんにちは、練師先生」


洋服を選ぶ人が変わったのかしら。女の子らしいのは同じだけれど、路線が少し違って見える。これまでが何処か上品で背伸びをしたような雰囲気なら、最近は年相応か少し幼くも見える可愛い雰囲気とでも言うべきか。どちらも、なまえ殿に似合っているけれど。


「新しいお洋服?」
「春華が選んでくれるの」
「春華?その方は…」
「司馬懿の奥さん!」
「えっと…お父様の会社の方、だったかしら?」
「うん!司馬懿が服届けてくれるの。元姫殿には贈れないからなまえ殿に、なんだって」
「そうなの」


新しい洋服は笑顔の源ではないみたい。それからその春華殿、よく話に出てくるお姉さんではないのね。司馬懿という呼び方からして、家族ではないようだし。


「練師先生、似合う?」
「ええ。とっても可愛いと思うわ」
「仲権も似合うって!」
「お友達?」
「うんっ!」
「じゃあ、その仲権殿に似合うと言われるのが嬉しいのね」
「うん、嬉しい」
「ご機嫌の正体は大好きな仲権殿かしら」
「仲権?仲権のご飯はおいしいけど、別に仲権がいるから楽しいわけじゃないよ?」
「あらそうなの?仲権殿のことは、」
「仲権は好き!…あのね、先生」


声を潜めて悪戯っ子のように瞳を煌めかせるなまえ殿。目線を合わせて顔を寄せると、彼女は楽しそうに笑う。


「郭嘉とね、一緒なの」
「郭嘉?」
「うふふ〜!郭嘉には内緒ね!」


郭嘉殿。
はじめて聞く名前。なまえ殿は楽しそうね、とても。



20130513

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