陳羣殿や荀イク殿と共に戻りたかったのだけれど、なまえ殿を警備室まで連れていかなくてはならず二人とは食堂で別れた。当然一人で帰れるはずなのになまえ殿は私の手を握って離さない。「貴方の役目でしょう」と責任大好き大真面目な陳羣殿に言われ、便乗した荀イク殿にまで頷かれて。
ああ嫌だ面倒臭い。ぶんぶんとご機嫌に腕を振るなまえ殿と繋がっているから、まるで私まで機嫌がいいみたいじゃない。
「真っ直ぐ送り届けて、私は戻るから。大人しくしていなさいね」
「はーい」
「何が楽しいんだか…」
「うふふ〜!」
「ったく…と、」
私を引っ張る勢いで歩いていたなまえ殿が突然足を止め、危うく突き飛ばしてしまうところだった。転んで怪我でもされたら曹丕殿に何をされるかわかったものではない。見ていなかったらぶつかっていたな、恐らく。
「どうしたの」
「にっ」
「に?…ああ。こんにちは、曹丕殿」
「なまえと昼か」
「はい、まあ。なまえ殿、挨拶をしていないから今してしまって」
「………こん、にちは、兄様」
「久しぶりだな、なまえ」
なまえ殿がびくりと肩を揺らし、曹丕殿に恐怖を感じているとよくわかる。
と、言うか。
久しぶりって、まだほんの数日しか経っていないと思うのだけれど、それは私の気のせいかな。私の知らないところで時が過ぎているとか、いやはや恐ろしい。
「郭嘉、送ってくれてありがとう。私もう大丈夫!」
「そう」
「バイバイ!」
「うん」
振り解くように手を離し、それはもう大急ぎで駆けて行くなまえ殿。ここで派手に転ぼうものなら曹丕殿まで大慌て、なまえ殿には何の得もないのにねえ。
「……元気そうだな」
「はい。元気すぎるくらいです」
「何故」
「は?」
「お前は好かれるのだろうな」
顔怖い。
なまえ殿の言葉を思い出す。
20121116