12

「なまえは?」
「…典韋殿と許チョ殿のところに」
「私には会いたくないか」
「さあ…」


これは落ち込んでいる、のだろうか。普段から眉間に皺を寄せている人だけれど、その普段より微かに、微妙に、寂しそうに見える。

目覚めるとやはりなまえ殿が腰に纏わり付いていて、朝から気分は最悪だった。後部座席から聞こえた鼻歌からなまえ殿の機嫌がいいことはわかったけれど、あの子は何がそんなに楽しみだったのだろう。典韋殿と許チョ殿とは面識があったらしくすぐに引き渡せたことだけはよかった。しかし蔡文姫殿には些か誤解をされ、曹丕殿に挨拶はという私の言葉は「嫌!」と一刀両断。典韋殿の背後に隠れてしまい、私が折れるしかなくなった。その結果が今のこの状況。ああまったく、なまえ殿は私に不幸を運んで来るのかな。


「学校だが」
「は?」
「…何を驚いている。今日のところは風邪だということにしておいたが、だ」
「曹丕殿が?」
「いや、甄から連絡があった」
「ああ」


何だか嫌な予感がする。私だって別に、なまえ殿を不登校児だと思ってはいなかったよ。そんなもう、十数年は前の小学生時代なんて覚えているはずもなく、何も言わなかったから休みだとばかり。だからここに連れて来たのだし(私が悪いの、これ)。


「…郭嘉よ」
「はい」
「明日からお前が連れていけ。帰りも共にしろ」
「え?いや、仕事が」
「会社から我が家はそう遠くはない。つまり、学校も近くだ。幸いなまえは会社の場所を覚えているし、終業まで典韋や許チョに任せておけばいい」
「はあ」


「郭嘉よ」だなんてまるで曹操殿に呼ばれた気分。そう思ったって、少しも気分は晴れないけれどさ。



20121116

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