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「なまえ殿は曹丕殿が嫌いなんだっけ」
「うん」
「甄義姉様は?」
「大好き!」
「父様は?」
「大好き!」
「曹丕殿」
「……」


途端に渋い顔をしてみせるなまえ殿に思わず笑ってしまう。甄義姉様と父様には満面の笑顔だったのに、兄様の名前を出したらすぐに歪んだ。実に器用なことだ。


「明日は一緒に来るんでしょう?曹丕殿には許可を取っておかないと。曹操殿が不在の折は、曹丕殿が部署兼会社の長だからね」
「…兄様に会うの?」
「当然」
「うー……」

唸り声を発したままカップを握り締めるようにするなまえ殿。「郭嘉が淹れたココア」を気に入るとは(実際、何を飲むか尋ねた際にそう言われた)、流石手作りに拘りをみせるなまえ殿というか。まあこれくらいなら私もコーヒーを飲むついでに出来るから、構わないけどね。

「そもそも一緒に住んでいるんだよね?」
「頑張って会わないようにしてる」
「頑張ってって」


曹丕殿が憐れというかなまえ殿の無駄な努力というか。食事はどうしたって顔を合わせるじゃない。そう尋ねてみれば、「甄義姉様の隣に座るから大丈夫」なのだとか。つまり曹丕殿の隣に甄姫殿、それからなまえ殿と。目の前に曹操殿として、まるで面接だ(兄弟はまだいるけどさ)。


「曹操殿のことは、大好き」
「うん!」
「曹丕殿に髭を加えたら結構似ていない?」
「…似てない。兄様笑わないもん」
「確かに笑わないか」


曹操殿は存外表情豊かな方だ。そんなところもあの方の魅力だけれど、成る程、曹丕殿は確かに受け継いでいない(文人的な面は、いや、あの家系は文人が多い)。慣れてしまった身からすると、曹操殿のように笑う曹丕殿は気味が悪い、かな。


「笑えば好きになる?」
「や」
「どうして曹丕殿が嫌いなの?」
「顔怖い」


おっと危ない、思わず吹き出すところだった。



20121116

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