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バックミラー越しに後部座席の鍾会殿となまえ殿を見れば、丁寧にマフラーを折り畳み、手袋を乗せて鍾会殿に返しているところだった。深々と頭まで下げて、そこはちゃんと曹操殿の教育を受けているのだなあと少しばかり感動してしまう(私ほどではないけれど鍾会殿も驚いているようだ)。


「ありがとうございました、鍾会」
「…別に。風邪を引かれても気分が悪いからな」
「いや、本当に助かったよ鍾会殿。なまえ殿の我が儘に付き合ってもらったし、休日に申し訳なかったね」


微かに反応を見せる鍾会殿。彼自身とても優秀で、よくいえば向上心に溢れた青年だと聞く。そんな鍾会殿が同じマンションに住んでいるというのは一つの運命だろう。


「郭嘉殿は社長の厚い信頼を得ていると聞きます。ですから休日でも、そう休んでいる暇はないのでしょう?」
「どうだろうね。自分自身が好んでいることだから、あまり意識はしていないかな」
「……。言っていただけたら、何時でも私が承りますよ」

ああやっぱり。鍾会殿の瞳の色が、面白いくらいに変化する。これで面倒事が減って、私の常の休日が返って来るわけだ。

「有り難い申し出たけれど、鍾会殿には関わりのないことだから。気にしないでいいよ」
「それこそお気になさらず。私に任せてください」
「おや、頼もしいねえ」


どうかしたかな、なまえ殿。そんな顔で見たって、少しも省みる点なんて存在しないよ?



20121116

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