07

私は選ばれた人間だ。幼少より英才教育を受け、将来は栄達の道を進むことが義務付けられているようなもの。だからこそ曹魏に入社した。父のコネではない。私の実力で、私が必要とされた結果なのだ。

ともかく。選ばれた存在である私は当然今よりもずっと優れた地位を得られるはずなのだ。あの狭苦しい部署では役不足。司馬昭殿にトウ艾殿、諸葛誕なんかには妥当だろうが、私には曹丕殿管轄の部署こそ相応しい。


そして、同じマンションに住む郭嘉殿は社長曹操殿の気に入り。上手く働けば社長本人との繋がりも確保できる存在だ。だからこれは想定外ではない、寧ろ好機としか言いようがないだろう。


「…名前は」
「曹なまえです」
「私は、」
「鍾会でしょう?郭嘉が言ってた!」
「……そうだ」


目上を呼び捨てだと、この子供め。まあいい。これでどうやら曹操殿のご息女らしいし、何故郭嘉殿が預かっているのかは知らないが、蔑ろにすべき相手ではないのは確かだ。それだけわかっていれば充分過ぎる。


「掃除と仕事が終わるまで、か。あの人ならすぐに片付くだろう」
「郭嘉ってそんなに凄いの?」
「掃除は知らんが。社長に随分と気に入られているようだし、相当実力はあるに違いない。ま、それも私と比較してしまえば大したことはないのかもしれんがな」
「鍾会も凄いの?」
「私だぞ?凄いなどという稚拙な言葉で表現出来る能力ではない」
「…よくわからないけど、鍾会は郭嘉と同じくらい凄いの?」
「それ以上だ」
「でも、父様から鍾会の話、聞いたことない」
「お前が聞いていないだけだ!」


今に見ていろ。郭嘉なんて男、すぐにでも追い越してやる!



20121116

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