きっと彼は「さよなら」って言っていたんだ

「ならば、その想いを向けられた人間はどうすればいい」


吐き捨てるようにそう言った若の横顔は真剣そのもの、それから怒っているようにも見える。見えるというか怒ってるよね、絶対。


「例えばだよ、例えば。別に俺がそうってわけじゃ…いやまあ、郭嘉殿の話ではあるけどさ」
「だいたい、自分が満足すればそれでいいのか?ならば失った者は、」
「嫌だろうけど!…きっと、自分が満足ならいいって、そう思ってるって言い聞かせなきゃなんだよ。……わかんないけど」
「憶測で吐くな」
「だって」


少し覗いてしまった郭嘉殿の心、何処かで聞かなきゃよかったなあと思っていたりもするわけで。何というか、庇いたくなる。似たような想いを俺だって抱いていて、まあ若の考えだって、わからないでもないけど。


「あなたのために死にたいですと言われたとして、そうかならば死んでくれと言えるのか?」
「…言える人は?」
「まあ、否定はせんが。そんな想いを向けられたら情も生まれるだろう」
「そうだね。少なくとも俺と若は、そうかも」
「それがわからぬ郭嘉殿では」
「わかってて知らんぷりはするかもよ」
「………迷惑な」


あそこを越えたら死ぬ、それがわかっていたとして。俺はどうだろう、郭嘉殿みたいに知らないふりで貫き通すのかな。自分が若にそんなことされたら怒るんだけどね、絶対に。


「若」
「何だ」
「また、郭嘉殿に会えるかな」
「…何を言っている」
「宴でさ、話したんだけど。変なこと言われちゃって」


ああどうか。
郭嘉殿が望むなら、天女様が彼の手を引いてはくれないだろうか。



20130413

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -