いつかまたってとても素敵な言葉だけれどそれ以上に人を殺すね

「よろしいのですか、本当に」
「ええ」
「随分と増えて…」
「どうやって伝えるというの?あれ以来、使者だって訪ねに来ないでしょう」


また何時か郭嘉様がいらしたら。願望と言うべきそれは、言い訳でもある。

郭嘉様がどうしていらっしゃるかは気になれ、文を出してしまえば期待してしまうもの。郭嘉様からの便りばかりが気になって、周囲に余計な心配を掛けてしまう。


「それに、どちらかと言えば日々の記録という意味が大きいの」
「なまえ様…」
「そんな声を出さないで。何だか申し訳なくなる」


記録と口にしたくせに内容は誰かに語りかけるようなもの、自分では書けないから書かせているというのに随分な我が儘だ。誰かというのも郭嘉様しかいない。ごまかせるはずがないのに、私は上手くいくとでも思ったのかしら。


「…郭嘉様は、曹操様は私では想像も出来ない道を歩まれている方。些細なことに気をとらせては駄目よ」
「些細、ですか」
「私にはそうでなくても。軍と女一人は比ぶべくも無いでしょう?」


尤もらしいことを口にするのは自分自身に理解をさせるためでもある。郭嘉様が尽くすと決めたお方、曹操様が心から必要としているお方、これからを築いていく方々が私に足を引っ張られていいはずがないのだから。

せめて、あの背を押す役目を担えたらよかったのかもしれない。郭嘉様が曹操様の傍らを歩んで行けるように、私自身が、迷わずにすむように。今更思っても仕方がないけれど。


「――…だから、いいの。郭嘉様の御心が向いたときにいらしていただけたら、聞いてくださるなら、その時で」
「…私が口を挟む問題ではございませんでしたね」
「貴女ではないわ。ただの私の我が儘よ」


郭嘉様が私を忘れてしまっていたとして。もうどうでもいいと感じていたとして。

文を出すことでそれを知ってしまうのが、怖いだけなの。



20130331

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