今君は、どこを見ているの?

「若、機嫌直してよ」
「何だその扱いは」
「何だって言われても。不機嫌じゃないの、どう見てもさ」
「………」


真面目だと言われたことに対してか、戦を控えた態度に見えない郭嘉殿に対してか、若はずっとこの調子だ。嫌いとまでは言いたくないけど、若は郭嘉殿みたいな人はあんまり得意じゃないからね。郭嘉殿は郭嘉殿で、真面目に分類される人をからかうのが好きみたいだし。酒を飲んだときとは随分違う雰囲気、あの人の本当ってのはどこにあるんだろう。


「何者なんだ、郭嘉殿は」
「何者か…まあ確かに、人間っぽくないかも」
「……俺はそこまでは言っていないんだが」
「そうだっけ」

俺だって頭を使わずに生きているわけじゃない、勿論若だって。頭を使わずに生きられる人間なんていないけど、郭嘉殿は普通よりもずっと思考を働かせて生きているんだと思う(そうすることが好きなのかもしれないけど)。だから俺達には、何を考えているかがわからないんだろう。

「ああして悟られぬ方が立ち回りやすいのかもしれんが、見え方によっては不気味だぞ」
「……うん、何を言いたいのかさっぱりだった」
「だった?」
「ああいや、…まあ、ちょっと話す機会があって」
「………お前も郭嘉殿も、俺には到底理解出来んな」


俺の言葉から何かを悟れるんだから、若は俺を理解してると思うけど。そんな風に返せば「すべてではない」なんて真面目な答えが返ってくるんだろう。相手のすべてを知ることが出来る人間なんていないよ、若。

俺にはわかるかもしれないからって誘った郭嘉殿。それが本音なのか酒を飲みたかったのが本音なのか、あの短い間じゃ掴めなかった。せめてもう一度、機会があれば。でも俺、それで聞き出せるって自信、あるのかな。


「――…若」
「何だ」
「そんな不気味な、人間かも疑っちゃう人を悩ませるのは…やっぱり天女かな」
「…気でも狂ったか、馬岱」



あ、郭嘉殿が誰かと話してる。あの人に嫌われてるのかな、郭嘉殿。



20130322

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -