届かない星になるなんて、馬鹿な話だ

「郭嘉は?」
「このままでは具合が悪くなると、街へ」
「…そうか」
「私は止めたのですが、殿、このままでよいのですか!?」


主の御前ということで抑えてはいるのだろう。しかし彼の郭嘉に対する苛立ちとはそう容易く鎮静出来るものではない。これは曹操だけではなく、陳羣自身も気付いているところではあろうが。


「陳羣、おぬしの言も尤も。特にこういった遠征における軍の規律というものは軽視してはならぬだろう。だが――…言うてもよいか?」
「……お聞きします」
「慣れぬ土地であるからこそ、得る情報は要となる。わしも郭嘉の不摂生には苦言を呈したいところではあるが、ただの不摂生で終わらぬ故強くも言えん」
「…それは確かに、そうですが。郭嘉殿の品行の悪さは今に始まったことでは!少しばかり落ち着いたかと思えば結局、それに、現在ではまた状況が異なります!」
「うむ、尤も。だがなあ陳羣、はぐらかされてしまう。あれは質が悪い、気付かれていると知っても尚、通す気だ」
「――それでは…」


陳羣の口にする「嫌いだ」という言葉には偽りなど存在しない。彼が郭嘉を快く思っていないことは疑いようもない事実だ。そうでありながらまるで案ずるような態度を示すのは、彼の性格故なのだろう。郭嘉が隠すことを得意とするなら、陳羣は謹厳さ故に放っておくことが出来ないのだ。実に難儀な男ではないか。


「陳羣、今ならばおぬしが奴を嫌う理由を理解出来る気がするわ」
「…失礼ながら。私には生涯、殿のお気持ちを理解出来る気がいたしません」
「なに、おぬしはそれでよい」
「殿、」
「おぬしはよいのだ、陳羣。ああ全く、腹の立つ男よな」


誰にも、何も告げる気はないというのか。



20130310

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