もうこの恋は、諦めるしかないんだなあって思った

書簡の内容に対する私の答えは考えるまでもなく決まっている。寧ろ待ち望んでいたと言っても過言ではないくらいだ。限られた生をただ楽しむ、その楽しみの大半は曹操殿のために知を振るいあの方の道を切り開くこと。私に糧を与えてくださったのは、曹操殿なのだから。


「そうでしたか、もう間もなく」
「うん。突然の来訪だったにも関わらず、相手をしてくれてありがとう」
「世話にというのなら私の方です。こんなに近くで誰かと触れ合うなど、もう何十年と前の話か」
「何十…そうか」
「まあ何です。見目でおわかりでしょう?」
「嘲ったのではないよ。度々耳にすることはあったけれど、幼いなまえ殿はさぞ可愛かっただろうなと」
「……今は?」
「私は幼いあなたを知らないから。比較のしようがない」
「あ、ああっ、そうですね、お恥ずかしい…」


少し焦ったように零すと「見て、いらっしゃいますか?」とか細くなった声が続く。何とも微笑ましい。思わず伸びそうになった手に、苦笑が込み上げる。


「…あの」
「ん?」
「――…曹操様は」
「曹操殿が?」
「何故、郭嘉様を私に」

なまえ殿が聞いたのは私に会えという言葉だけ。私が受けたのは遠征の折までなまえ殿の下に留まれという命。彼はそれ以上を私に、なまえ殿に告げてはいない。

「どうにもお互い、暮らしを供にすること以外は聞いていないようだ」
「困ったものだ、とは仰せでしたが」
「困った?…何の話だろうね」
「肝心なことは話したがらぬ、とも」
「初対面の相手にそんなことまで?うん、何と言うか――…まあ、それはそれとして」


なまえ殿がどうなのかは知らない。それどころかそれなりの年月を重ねてきた相手が知っているのかもわからない。何より曹操殿、ああ、これも何度目だ。こんな風に考えるのが私らしいのからしくないのか、自分では判断しかねてしまう。


「可愛いと思うよ」
「え?」
「今のあなたしか知らないけれど、十二分に」
「かっ、郭嘉様!」
「聞いたのはあなたじゃない」


この感情をどうするか。さて、決めてしまわないとね。



20121215

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