体のどこかで痛いよの警報が鳴っている

味のわからない酒ほど不味いものはない。私自身酒は楽しく飲みたいと思っているし、それならまあ、手を止めろという話なのだけれど。


「――…こういう欲は、いらないなあ」

永久というのは、叶わないとわかっているからこそ甘美であり魅力があるのだ。浮遊し漂うことを楽しむための措置であり、届かぬと痛みに顔を歪めるならばもう楽しみとは呼べない。そこまで来てしまえば切り捨てることだって難しくなる。

「戻ったら曹操殿に怒られるのかな。…それはちょっと」


怒るというよりは溜息を吐かれる気がする。陳羣殿や荀イク殿の苦言は聞き飽きたと思えど、曹操殿に眉根を寄せられるのは間違いなく応えるなあ。ならばどうしたものか。

ここに身を置きすぎては臆病な心が生まれてしまいそうで怖いのだろうね、私は。だから、一人になると考えてしまう。

それにしても、自分がこうも面倒な人間だとは思わなかった。なまえ殿を慕わしく感じているのは事実で、彼女と触れ合う間というのは穏やかで幸せだ。本人にも告げたように曹操殿に感謝はしている、けれど。


「断ればよかったよ、まったく」


まあ口で何を言っても私はここにいたのだろう。そして結局はこの心地のいい、少なからず手放したくないと感じている場所に身を沈めていたくなるのだろう。

そんな感情を作りたくて、曹操殿は意図的に私を導いたのかな。


「本当に失いたくないものは何だろうね」

なまえ殿か、曹操殿か、それとも。

「――…気付いているのかな、曹操殿は」


私自身、なのか。



20120810

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