頭、痛い、

「つまり?」
「いや…何だろう」
「珍しいこともあるものですな。郭嘉殿が明確な答えを出しておられないとは」
「そう?」


それこそ曹操殿以上に関係がないし、なまえ殿とも結び付かない。敢えて挙げるのなら真っ直ぐに私を見る、という点だろうか。そこだけ、似ている(似ていると言うのは語弊があるけれど)。


「確証のないことは口にせぬ方であると、勝手に思っておりました故」
「…どうして張遼殿に尋ねたのかな」
「……さて」
「うん。だよね」


大して親しくもない、馬が合うわけでもない相手。戦に関して話を持ち掛けるのであれば打って付けだろうけど、私の相談は違う。張遼殿では良策は出ないと断言出来る事柄だ。

それでも声を掛けたのは考えはじめた頃に張遼殿が目に入ったから。つまりは運がなかった、張遼殿に。


「郭嘉殿。…これは私の思い込みですが、貴殿が己を抑圧してまで嫌悪する相手と結ぶとは、とても」
「益があればその限りでもないよ」
「その女人が与える益は」
「……曹操殿が喜ぶ?」
「はあ」
「けれど、何故喜ぶのかはわからない」
「先程は殿がその女人を求めていると」
「何でだろう」
「さて。郭嘉殿に推し量れぬのならば、私にはわかりますまい」


曹操殿がなまえ殿に会いたがっている。だから私は会いに行く、言葉を交わす、知ろうとする。曹操殿にとって善となるならば、それは私にとっても善(のはず)だ。

曹操殿がなまえ殿を求める心に偽りはない。彼女に会うのは私でなければならないのだと確信もしている。それだけで充分だと普段ならば、きっと思う。


「…件の女人の心を殿に向けさせたい。郭嘉殿がおっしゃりたいのは、こうですかな?」
「そうだよ」
「なれば何故、難しい顔をなさるのか。女人への品は得意分野では」
「それを曹操殿からだと言って渡すんだよね、私は」
「ええ」
「………」


主人の特徴を知りたいと言ったなまえ殿。近く訪ねると約束を取り付けているのに、結局私は碌な答えを用意していない。

贈り物は詫びのつもりではなく、単純に何かを残したくなっただけ。動けば涼やかな音が鳴る飾り。私が訪ねる日には必ず付けてもらって、その姿を見ていたいと思う。曹操殿のためではなく、私欲だ。


「嫌だ。私が心に浮かべながら選んだのだと、そう言いたい」
「童子のようなことを」
「…困るのは」
「はあ」
「そう素直に言っても曹操殿は気を害さず、続けろと笑うかもしれないってことだよ」


好きなはずの思考が煩わしい。欲しいと言うのに何故怒らない、欲しいと言うのに何故心変わりを望む。まるで私に曹操殿ではなく、自分のことだけを考えてなまえ殿を求めろと言っているような。

今何よりも重要なのは袁家や烏丸の土地を得ることと曹操殿が進むための強固な地盤を築くこと。周囲の動きを的確に知り、憂いを断ち切り進んでいただくことなのに。


「つまり」
「…何?」
「郭嘉殿は純粋に、利益など関係なくその女人に好意を抱いていると」
「――…それは」
「好意と言っても千差万別であり、」
「知ってる、そんなの」


詰まったのはさ、ねえ。



20120413

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -