恋う

「はい、とれたよ」
「あっ、あり……いえっ、感謝申し上げます、関索様」
「お礼なんて。折角綺麗な髪をしているんだから、痛めてしまっては申し訳がない」
「は、い……」


関索様の手が離れていく。私の髪も、支えを失って零れ落ちる。

胸に込み上げる寂しさは抱いてしまうことが悪のようで、私は関索様を恐ろしくも思うのだ。こんなにも優しくて、ひたむきで、純真な方だというのに。恐ろしさとは無縁なように、思えるのに。


「なまえ、こうなったのも私が贈った飾りが原因なんだ。君に非はないよ」
「私が不器用なだけで――…上手く纏めることが出来なかっただけなのです。関索様にこそ非は、」
「だけど、私が贈ったもが君を傷付けたことに変わりはない」
「傷付け、そんな、関索様は痛まぬようにと気遣ってくださっただけに過ぎません」
「我が儘かもしれないけれど、私の気が済まないんだ。だから、私が悪かったと言ってもらえたら、有り難い」


何て穏やかな微笑みだろう。
ああ、私は関索様のこの真っ直ぐさが恐ろしいのだ。真っ直ぐだから、綺麗だから、怖くてたまらない。私は関索様のように、なれないから。


「……でしたら、関索様。このままというわけにもまいりませんので、結い上げてはいただけませんか?……私ではまた、髪を引っ掛けてしまうかもしれませんので」
「勿論。だけど、それでいいのかい?」
「――…はい」


ただもう一度、触れてほしくて。
関索様はこんな風に口にはしないのだろう。

私は勇気がなくて、そのくせ、欲張りだから。

20130901

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