探す

「ここにいたのですね、なまえ殿」
「ああ!月英殿!」


丁度よかった。
続けて言えば、月英殿は目を丸くする。なをだか珍しい表情を見た気分だ。私が目にする月英殿といえば、何時も涼やかな顔をしているから。


「よかった、ですか?」
「はい。お探ししていたので」
「私を?」
「月英殿を、というよりは――…月英殿なら居場所を知っているかな、と」
「そうでしたか。でしたら、なまえ殿からどうぞ。私は急ぎではないので」
「あ、ではお言葉に甘えて……」


そう零すと、月英殿は微笑む。本当に微かに口元を緩める程度の品のいいものだ。
流石諸葛亮殿がその傍らを許した方だと感じる笑みは、私も見習わなくてはと思えてならない。


「えっと。姜維を見ませんでしたか?」
「姜維殿……さて、見ていませんね」
「そうですか……では、諸葛亮殿にも尋ねに――」
「ああ、孔明様のところにはいませんよ。私は孔明様から言伝を受けて、なまえ殿を探していたので」
「諸葛亮殿が?」
「ええ。孔明様がお呼びです」
「……私を」
「何か用があるなら片付けてからで構わないと。ですので、姜維殿に会ってからでも問題はありません」
「あー……いいえ、諸葛亮殿に会いに行きます。姜維にもまあ、大した用ではないので」
「そうですか?」


暫しの沈黙。心を探るようなその視線に体がむずむず、痒くなる。

この間というのはどうにも苦手だ。
誰とでもだけど、月英殿と諸葛亮殿は特に。別に彼等は私の心を探ろうだなんて思っていないだろうけど。


「……ただちょっと。いただいた果物が美味しかったので、姜維にもあげようかなと」
「ああ、成る程」
「………」
「照れずともよいのですよ?」
「しっ、諸葛亮殿に会ってきます!」
「ええ、お気をつけて」


まるで見守られているような視線。
あっという間に顔が、熱くなる。

20140205

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