茶化す

探す続編

どうぞ、と静かな声が響く。
確認すると当然、諸葛亮殿がいらっしゃった。驚かないということは、私が来ると予想していらしたのだろう。


「月英殿に、お呼びだと伺いまして」
「ええ、そうですね」
「……一体」
「姜維がなまえ殿を探していたと、伝えておきたかったのです。……その様子、まだ会えてはいないようですね」
「おっしゃる通りで――…えっと。姜維が私を、ですか?探していたって」
「おや。もしや、なまえ殿も姜維に何か?」
「…………まあ、はい。少し」
「それはそれは。擦れ違いになってしまった、というわけですか」


ひょっとして、自分で探す前に諸葛亮殿を訪ねていれば会えたんじゃ。
考えてみれば姜維は諸葛亮殿の下で学んでいるのだ。姜維がいる可能性が高いのは、ここじゃないか。


「火急の用ではないようでしたが。言伝も姜維自身に断られてしまい、お伝え出来ることが何もない状態でして」
「諸葛亮殿に対して、ですか?」
「黙しておきたいことの一つや二つ、誰にでもあるものです。――もっとも、姜維は素直過ぎるのですが」
「はあ」
「……」
「……えっと……?」
「なまえ殿も、同じく」
「え、」


悪いことをしているわけではないのに、汗が吹き出す。表情までぎこちなくなり、見事諸葛亮殿の笑いを誘うことになってしまった。

月英殿とはまた種類の違う、何処か見守るようなのは、同じかもしれないけど。


「なまえ殿と姜維は、仲が良いですね。微笑ましい限りです」
「あ、ありがとうございます……」
「どうやら私は、意図せずして邪魔をしてしまったようで。申し訳ありません、なまえ殿」
「邪魔!?いや、邪魔だなんてそんな、思ってないです!姜維に会えなくなるわけではないですし、だからどうか気に病まれず――」
「――…反応まで似ているとは。姜維は、なまえ殿が行きそうな場所を探してみると言っていましたよ」
「…………ありがとう、ございます」


わざとじゃないかと感じてしまうのは声の響きだろう。これを言うために月英殿に言伝を頼んだなんてことは、ないはずだ。

私と姜維が会えたとして、諸葛亮殿に頼んだことが引っ掛かっても悪いからと、そんな風に考えていらっしゃるに違いない。


「なまえ殿への贈り物」
「贈り物?」
「私には見せたくないようで、必死に後ろ手に隠していました」
「――…私とは限らないのでは……」
「いいえ。あの慌てよう、なまえ殿以外には有り得ません」
「…………姜維、探してきます」
「会えることを祈っています」


私が行きそうな場所。
姜維が行きそうな場所を探していたら、会えないわけだ。

20140207

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