巡り合う

茶化す続編

今後ともよろしくお願いします。
退出する前にとどめように放たれた言葉を思い出すと、どうにも顔が熱くなる。ああまったく、あれは完全にからかわれたな。

私が行きそうな場所というより、姜維の考える私の行きそうな場所、だろうか。
それって難しい。そもそも姜維は、私をどう思っているのだろう。


「………」


いや、そうじゃなくて。
放置していては果物が傷んでしまう。思わず歓喜の声を上げそうになるくらい美味しかったから、是非姜維にも食べてほしい。

そこで浮かんだのが姜維だけというあたり、言い逃れようもなく正直な思考だ。


「諸葛亮殿がそんなことを言うのがそもそも……月英殿も……」


なんだか、恥ずかしくなる。
長い独り言も相まって膨らみ続ける羞恥。数度頬を叩いて落ち着こうと試みるも、捉えた人物に心臓が一層暴れだした。

探していたからいいんだけど。ありがたいんだけど、困ってしまう。隠れてしまおうか、でも隠れる場所なんて。不自然に周囲を見回していると、ついに名前を呼ばれてしまった。

呼ばれたら仕方ない、というか、会いたかったんだって。


「なまえも丞相のところだったのか」
「ああうん、――…姜維が私を探してるって、聞いたんだけど」
「そうだな。いや、そう重大な用ではないんだが。あー、その、疲れは取れたか?」
「疲れ?」
「このところ執務に精を出しているから、疲労が溜まっているだろうと丞相が。何かいいものはないか相談をしたら、女官にこの香を渡されてな」
「……ん、いい香り……」
「気に入ったのならよかった。…………それと」


こほんと咳払い。
姜維の言葉を待っていると、整えるように息を吐き出す。まるで自分を見ているようで、落ち着かない。


「今晩はなまえを招待しろと言われたんだが、暇はあるか?」
「大丈夫、だけど」
「張り切って食事を作るから絶対に連れて来い、だそうだ。構わないだろうか?」
「――…それならさ、姜維。私も果物もらって。美味しいからどうかなって、思ったんだけど」


部屋に戻らなきゃいけないんだけど。
ついでというにはあまりに唐突で、不自然だ。思わず浮かんだ苦笑に、姜維は瞳を細める。


「ありがとう。なら、寄らせてもらう」


一気に全身を巡った安堵や靄の晴れた感覚は、ようやく話せたことにか断られなかったことにか、どちらだろう。

20140209

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