弄ぶ

躊躇う続編

瞳を丸めて私を見る。
やはり私は、袁紹様のこの表情が堪らなく好きである。
けれど笑ってはいけない。私は、悲しんでいなければ。


「なまえ、今――…なんと言った?」
「……ですから、袁紹様は私を快く思っていない――…お嫌いなのだろうと。以前は明確なお答えをいただきませんでしたが、ふと思い至りまして」


私の無礼極まりない態度であれば、至極当然ですわ。

口許を袖で隠し告げると、袁紹様は困惑したように眉を下げ、何か言いたげに口を開いた。

けれども言葉は出ないらしい。
ああ、こうして口許を覆ってしまうのは都合がいい。悲劇的な、か弱い女という印象を与えることも出来るし、何より喜色に綻ぶ唇を隠してしまえるから。

声さえ上げなければいいのだ、どれだけ袁紹様を可愛らしく思っても。


「なっ、何を言うか。私が口にしたのは袁という一族、名族に相応しい人物像であって、なまえを否定したわけでは……」
「ですが、即ち袁紹様が恋しく感ずる存在ということに他なりません。私では、到底無理な話でしょう」


右往左往する瞳も可愛らしい。
なんとか「そうではない」と私に伝えようと、何を言うべきか思案する様子が愛らしい。けれども自尊心が邪魔をして素直に告げられずにいる姿が、心を刺激して堪らない。

頬を緩めるなというのが無理な話。
袁紹様は女人を、他者を遠ざけることが出来ぬ人ではあるまい。私に対して言葉を選ぶのはつまり、ああ、駄目だ。肩が揺れてしまう。


「む、なまえ?気分が優れぬか?」
「…….いいえ」
「しかしなまえ、――…なんと!笑っているではないか無礼なっ!!」
「まあ嫌だ。気づいてしまわれましたか?袁紹様」
「なんとっ、やはりなまえは名家たる袁氏には相応しくない!名族をなんと心得る!!」
「私にとってかけがえのない存在と。袁という血筋というよりは、たったお一人なのですが」
「…………しっ、痴れ者め!」
「ふふっ、」
「なまえ!!」
「申し訳ございません、袁紹様」


袁紹様のお顔が赤くなる。
ああ恋しい、嫌ならば躊躇いなく、突き放してくださいな。


20150331

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