自惚れる

子供のようだとよく言われ、その通り私はよく臍を曲げていた。

いたとなるのも、最近ではめっきりなくなったからである。聞き分けはよくまるでどこぞの淑女のような立ち振る舞い。「最初からそうしていればよかったものを」と、ご丁寧に反意がなければという言葉まで付け加えた賈充殿に言われもした。

あの人はなんと言うか、嫌味ったらしい。
すっかり大人しくなった理由を承知で、わざわざそんなことを言うのだから。


「あー、たく。なんでこうなるかな」
「……こんなところに来てよいのですか?」
「いいんだよ」
「私はちょっと、一人になりたいというか」
「俺はなりたくないんだ。しかも賈充がいないとこがいい」
「なら、ここは間違いではないかと」
「いやいや」


人の気配を感じた瞬間に期待が生まれたのは、これまでの経験上。現実味はまるでないというのに。

だってそうしてくれた人はこの先、私の背後ではなく、視線のずっと先にいるのだから。敵として。


「……私は別に、慰められたいなどと思ってはいませんが」
「…………慰める気はないからなあ」
「その沈黙は肯定のようなものでは……」
「なんでもいいだろ!しかしまあ、俺ですらあんまり気分が良くないんだ」
「……私は、別に」
「別に、か」


喜怒哀楽が激しい、彼に言わせれば私はそんな人間だった。
姿を暗ます原因と言えば大抵が鍾会殿や賈充殿との諍いで、その度に息を切らして捜してくれたのだ。

彼は、私が何処にいても絶対に見付けてくれた。私を見捨てたりはしなかった。
誰かに見捨てられたわけではないけど、そんな風に傍で黙って背中を撫でてくれる彼が好きだったのだ、私は。

期待は何時しか形を変え、妙な感情を発生させる。私が想うように彼も、だから彼は。結果的にそれが妄想で、しかも馬鹿げていると痛感することとなったのだが。


「お前には命を下してないんだから、大人しくしててよかったんだが」
「来たかったので」
「命令違反だろ」
「この戦が終わったら、いくらでも罰をお与えください。……死罪でも」
「あのなあ。……あーもう!面倒くせえな、お前」


連れていってくれると思っていたのだ、勝手に。ああ、思い上がりも甚だしい。

20140105

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