願う

手を出すように促され、またその声色が慣れた響きよりも真剣だったものだから従うと、掌に小さな石か玉か、郭嘉が身につけている飾りによく似たそれを置かれた。

いや、同じだろうか、もしかして。


「……してるね」
「ん?ああ、作らせたんだよ、同じものを」
「なんでまた」
「あなたも意地が悪いねえ。当然、なまえに渡すためだよ」
「……ありがとう」
「どういたしまして」


なまえ。なまえ殿からそれに変わったのはいつだったか。私は彼を郭嘉と呼ぶから、呼び捨てにされることに不満はないのだけれど。

手の中心で輝く、郭嘉とお揃いの耳飾り。これはどうやってつけるのだろう。ひょっとして、耳に穴を開けてみたりするのか。
郭嘉の耳を観察したこともなければ外したところを見たこともないため、どういった仕組みになっているのかがわからない。


「つけてみてもいいの?これ」
「おや、つけてくれるの?」
「そのつもりだったんじゃないの?」
「お守りにどうかと思っていたのだけれど。あなたが好んで私と揃いのものを身につけるとは思えなかったから」
「……そう?」
「違ったかな」


体に穴を開けるとなるとぞっとする。
戦に出て傷を作っておきながら何を言っているのかとも思うけれど。自分で傷を作るのと誰かに作られるのは違うというか、まあ、どちらも好きなわけではないし。


「ねえ、郭嘉」
「ん?」
「急にお守りなんてどうしたの」
「どうということもないけれど。なまえが末永く生き、且つ多くの望みが叶うようにというまじないかな」
「郭嘉もそういうの信じるんだ」
「どうかな。信じるというよりは――…ああ、あと」


なんだか困ったように笑って、耳飾りに触れるというよりは私の手を包むように、郭嘉の両の手が触れる。
第一声から違うと感じていた郭嘉が、この一時だけ日頃から親しんだ郭嘉に戻ったような、気がした。


「出来るならなまえが私を忘れませんようにという願いと呪い、かな」
「のろ、……は?」
「実際にそうなったら苦しくて堪らないのだろうけど。少しでも縛ることが出来たなら、少しだけでも幸せなのかな、と思ってね」
「……急にどうしたの、郭嘉」
「戯言のようなものだよ」
「ような?」
「じゃあ戯言」
「何それ」
「大事にしてね、それ」
「え?……うん」


頷けば郭嘉は嬉しそうで。

真意を知ることは幸せなのか、よくわからない想いが、身体中を駆け回る。

20150218

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