君と僕の関係について

ごめんは今度はこちらの番だ。目に見えて暗い孤爪に何となく原因が浮かび黒尾は知らずに苦笑してしまう。当然隣にいるのだから孤爪にも聞こえて、普段の何倍か鋭くなった猫目が黒尾を睨みつけた。まあ、身長差で睨むよりは少しも可愛くない上目遣いのようなのだが。


「なら、止めて」
「学年違うし」
「クロさんクロさんって煩い」
「悪いのは俺だけじゃない」


言えば孤爪は眉間に皺を寄せていっそう黒尾を睨むのだからやっていられない。確かに孤爪が疲弊している原因はとある女子生徒で、その女子生徒は黒尾のことで孤爪に纏わり付いているのだが。

しかし、考えてもみろ。
彼女がクロさんクロさんと煩くする種を蒔いたのは孤爪自身ではないか。彼女曰く「孤爪くんにクロさんの話を聞いた」であるから間違いない。自分ばかり被害者だと訴えるのはお門違いなのだ、つまり。


「………だって、言わないとどこまでもついて来そうで」
「…わからんでもない」
「クロがどうにかばっさり、言ってくれると思った」
「言える空気じゃなかったというか」
「意味わかんない」


視線を前、少し地面を見るように伏せた孤爪が一瞬もやしに思えた。疲れている、のはどちらだろう。

休み時間に放課後、容赦なくみょうじは顔を出してクロさんクロさんと騒ぐのだ。お陰でちょっとした名物、誰も本気にはしていないだろうが、「年下彼女」の愛称で親しまれつつある。


「あ、そういや研磨」
「……何?」
「名前に学年、部活以外になんか教えた?」
「…教えた」
「美味い定食屋があるから行こうって煩いんだよ、最近」
「教えないと、ずっと話しかけて来る」
「すっかり仲良しだな」
「…クロの話ばっか」
「……」


クロさん。疲弊している孤爪には悪いが、ふと思い出せる程度にはすっかりみょうじに慣れてしまった。声の調子で機嫌がすぐにわかる、黒尾を呼ぶときは概ね機嫌のいい変な女子。孤爪は日々疲れているし、黒尾も呆れはするのだが。


「クロ」
「ん?」
「……笑ってないでよ」
「あれ?笑ってる?」
「逃げたくなる」
「俺だってそうなはず…なんだけどなあ」
「………嘘だ」


どうにもそんなみょうじが可愛く思えてしまって、強く言えない始末なのだ。



end.

20140708

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