※現代
ぐずぐずと鼻を啜っていると横からハンカチを差し出される。とてもお礼を言える状況ではなく、受け取ってすぐに拭えば「やる」の一言。そこそこしそうなハンカチだけどいいのかな。まあ、公閭がいいって言ったらいいんだよ。ここで尋ねようものなら「煩い」とか言われるに違いない。
「お前の肉親でもないだろう」
「……違う、けど」
「酷い顔だな。万が一にでも憧れているなら、その擁護しようもない顔をどうにかしろ」
「というか。公閭だって、知り合いじゃん。感動しなかったわけ」
「したはした。……ああ、色々と相談を受けていたんだったか?」
公閭の言葉で迫り上がってきた涙により声が出なくなる。喧嘩をしただの別れるかもだの、怒ったあの子も辛そうなあの子も沢山見てきた。
だからだろうか。
心底幸せそうな笑顔が嬉しくて。ハンカチはそろそろ使い物にならなくなりそうだ。でもこれくれるんだもんね。ならいい、使い倒してやる。
「綺麗だったね」
「そうだな」
「幸せそうだったね」
「そうだな」
「適当でしょ」
「そんなことはない」
「……私も何時か」
「何時かな」
「………」
「何だ」
何も言わず隣に立っている公閭。私がもらった引き出物まで黙って持ってくれている。
「…公閭」
「………」
顔色一つ変わらないけど、感動したんだよね。公閭にもいるんだろうか、結婚したい相手とか。
「……お葬式みたい」
「もっとよく拭け。見るに堪えんぞ」
「うぶっ!」
ちょっと待って、顔が潰れるんですけど!
end.
20140110