※愛してるってこういうこと

※現代

ああそうだ、と。何かを思い出したにしては感情の足りない言葉につい意識を持っていかれる。「ん?」と顔を少しだけ相手に向けて吐き出すも特に何があるわけでもなく。

もう家なんだけどな。
相変わらず真逆の道なのに送ってくれる律儀さというか深さに浸りつつ、慣れた上に幸せを感じる私もまあ相当なのだろう。友達には羨ましがられるどころか引かれた。「それちょっとあれじゃない?」とオブラートに包まれて。それ以来公閭の話はしていないけど、まあ毎日のように迎えに来られては嫌でも視界に入るというやつらしい。私は悪くないよ、それ。


「忘れ物した?」
「していない。それよりも明日、忘れるなよ」
「公閭こそ、子上さんに泣きつかれたから取り消しとかなしね」
「子上もどうせ出掛けるだろう」
「あ、彼女いるんだっけ」
「美人だ美人だと煩くて敵わん。…それよりだ」
「そう、何だっけ」
「渡すものがある」


吐き出す息が白い。
寒いと口にする割に防寒対策をしないものだから今日はマフラーを巻かれた。返そうとしても受け取ってくれないから、後日似合いそうなものを贈ろうかと思ったのだ。明日は出掛ける予定だし、折れるまで勧めるとしよう。


「………おう」
「受け取れ」
「すご、ラッピング綺麗…あ、バレンタイン?」
「ああ」
「…買ったの?」


まあよくてビジュアル系、どちらかと言えば妖怪の類いと言われても仕方のない公閭があの特設コーナーをうろついたと。九割女子の空間にこの顔が、この威圧感が。包装もリボンも私好みで流石は公閭だと言うほかない。


「いいや、作った」
「作った!?…まさかラッピングも」
「ああ」
「わ、え、私買ったやつだよ…」
「構わん。まあそうだな、出掛けるときに受け取る」
「気分?」
「気分だ」
「………」
「…どうした?」
「…折角だし、泊まってく?」
「……そうだな」


対抗心ってわけじゃないけど。

スペアの鍵、チョコと一緒に渡してみようか。



end.

20140214

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -