焦がしながら込み上げてくるのです

山岳賞。巻ちゃんと全力の勝負をし、ずっと願っていた夢を叶えて手にしたもの。コンマの差で前に出てゴールラインを超えた瞬間は興奮した。

そして、表彰。
注目を浴びるのは好きだ、特に女子の(まあオレは、意図せずして女子の視線を独り占めしてしまうのだがな)。それに地元箱根で山岳賞を手にしたというのは最高の気分だ。それもこれもあのメガネくんのお陰だ、感謝せねばなるまい。三下は失礼だったな、うむ。感謝もだが謝罪もだ。ついでに巻ちゃんにもステージに来なかった理由を尋ねねばなるまい。


「真波、メガネくんに会いに行くぞ」
「え?…ああ、小野田坂道くん、ですか?」
「そう!そのメガネくんだ!――と、その前に」
「?」


間抜け面になった真波を見届け指を差す。その先にはなまえ、しっかりと箱根学園、いや、オレの応援をしに来た女子。

巻ちゃんとの最終勝負を見せられなかったのは残念だがまああれだ、心臓発作で倒れられでもしたら大事だからな。オレの走りは別の機会に見せるとしよう。ああ、オレの登りを見たらますます惚れてしまうに違いない。仕方あるまいよ、何せオレは登れる上にトークも切れる、箱根学園イチの美形クライマー東堂尽八なのだから。


「なまえ!ハッハッハ!見ろ真波、オレのあまりのカッコよさになまえは声も出ないらしい!まあ当然だな、オレは眠れる森の美形、スリーピングクライムそして山神!山岳賞も取ったとなれば見惚れずにはいられまい。…どうだ、なまえ。ライバルと死闘を経た先の山岳賞、カッコよすぎて堪らんだろう?」
「――…ねえ、」
「皆まで言うななまえ、ちゃんと気持ちはわかって…」
「御堂筋くんって、何なんだろう」
「ん?」
「へ?」


ぼんやりとしたなまえの口から零れた単語。いや名前。御堂筋、御堂筋とはあれか、ウチにケンカを売ったあの。何故その名前が出てくる、その口から最初に飛び出す名前は東堂尽八だろう。


「長いしデカいしどこ見てるかわからないし…こう、さっきから御堂筋くんが頭の中を駆け巡っててこう、…わっ!ぞわっとした!!」
「………山岳賞」
「不気味だよ…怖いよね、あれで一年生なんだっけ?あーまたぞわぞわしてきた!」
「…森の忍者…」
「うるさいぞ真波っ!!メガネくんだメガネくん!」


たまたまだたまたま。なまえは「山神!すごい、東堂くんっ」と頬を真っ赤にして笑っていたのだから。

別に悔しくなどない、少しもまったくこれっぽっちも、悔しくなど!



end.

20140220

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -