きみが居なけりゃ、きっとなにもかもがうまくいく

巻ちゃんがそこにいることへの疑問はない。寧ろこんなところで会えるとはとテンションが上がっているくらいだ。まあ当然声は掛けるだろう、当然な。しかしあれだ、巻ちゃんの目の前に座っている子は一体何者だ。

女子だ、女子。オレは知らない女子。見た感じ話が盛り上がっているようには見えないぞ、巻ちゃん。何とも情けない。可愛い子じゃないか、困ったようなその表情も。


「何をやっている、巻ちゃん!」
「げ」
「え?」


げ、とは失礼な。巻ちゃんの反応というよりはオレの声に反応したに違いない女子と巻ちゃんの視線がオレに向けられる。

うむ、実に爽快だ。
ほら見ろ巻ちゃん、店の女子どころか外を歩く女子すらオレに釘付けだ。これが箱根学園イチの美形、東堂尽八というわけだよ。わかるかね。


「その女子は誰だ!彼女か?彼女なら紹介するべきだろう、オレと巻ちゃんの仲ならばな!」
「巻ちゃん…?あ、巻島くんのこと?」
「いや違うショ。何か勝手に一人で盛り上がってるだけだから、何も気にしなくていいし」
「酷いぞ巻ちゃん!ああそうだそこの女子、オレを知っているか?」
「いや…」
「そうかそうか!ならば仕方がない、いつものをやるしかないな」
「何時もの?」
「あー、マジもうあれ、聞いてなくていいレベルだから」
「登れる上にトークも切れる、箱根学園イチの美形クライマー東堂尽八!つまり天に三物を与えられてしまった男だ、オレは」
「………はあ」


巻ちゃんはまあ何時でもこの目だが、女子の反応が薄いな。ああ、照れているのか。恥ずかしくとも反応を示さないのは失礼と、まあつまりはそういうことだろう。やはり可愛いじゃないか、巻ちゃん。ははあ、成る程。それでだな。


「その子がオレに惚れるのを懸念して、話題を切ろうとしていると」
「それはナイ」
「それも仕方ない、何せオレだからな。だが彼女はしっかり巻ちゃんを見ているんだな、いい子だ」
「聞いてねーし…」
「他校のあれ?自転車競技やってる人?クライマーって巻島くんも、だよね」
「……まあ」
「巻ちゃん、相手は彼女だろう!流石は巻ちゃんだがもっと笑え!外から見ていても盛り上がっていないと丸わかりだったぞ?」
「だから彼女じゃねーし」
「キミ、名前は?」
「あ、えーっと…」
「言わなくていい。別に知らなくても困らないショ」
「大丈夫だ巻ちゃん、オレのファンにはなるかもしれないが、惚れているのは巻ちゃんだからな!」
「うっぜ…」


苦笑いで巻ちゃんを見る女子。あの巻ちゃんがな。

あ、笑顔がキモいとか思われていないだろうか。まったく心配だなあ、巻ちゃんは。



end.

20140221

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