上がる嬌声。漏れる吐息。下腹部に感じる質量と、股下を濡らす二種類の粘液。 私もコイツも所謂人間の三大欲求にそれ程の興味はない。 だからこうして月に数回行うこの行為に、通常人間が求めるであろう、愛や快楽、征服欲なんて意味は無く、強いて言うならば生理現象。身体の調子を整える為仕方なく、と言う感じだ。だから跳ねる身体も甘い喘ぎも何処か他人事で、熱に魘される息さえも客観視。 「――――ん、…ッは…、ぁ」 「…ここ、気持ち良い…ッの……?」 「えッ…、―――あぁ…ッそう、かも…」 硬い肉が熱く突き上げる。競り上がる腰の戦慄きは、多分、快楽の絶頂が近い証拠。 「――いざ、や…ッあ、……ハッ…」 「そろそ、ろ……か…な?」 「、う、ん………――――ァ、ッっ…!」 急速に収縮する膣内。破裂する様に注ぎ込まれる白い、熱。じんわりと他人の熱が胎内を満たす様を、飛びかけの意識の断片で感じていた。 「、…アレ、起きた?」 「――んー今…ね。どれくらい寝てた…?」 「いや、そんなに。ほら、」 「あ、ほんとだ」 律儀に首下に回された腕と髪を梳く指。何だかんだで自分は臨也にとって一応、ゴミの数ほど居る人間の中で特別な存在として扱われているんだと分かる。 分かり易いんだかそうでないんだか… 自分も相当捻くれていると自覚しているつもりだが、コイツも中々どうしてこうなったと聞きたく成る程捩くり曲がった良い性格だ。 「どうしたの侑子?キミから甘えてくるなんて珍しい」 頬を首筋に擦り寄せ、スンと犬の様に鼻をヒク付かせる。そのまま汗の滲む皮膚をねっとりと舐め上げ軽く甘噛む。臨也はその行為にクツクツと機嫌良く咽を震わせ、口端を緩める。 「本当にキミは面白いね」 「、そりゃどーも…」 臨也の問いを気にする事無くそのまま肩口、鎖骨、胸板、腕、とキツく吸い上げ紅い華を咲かせていく。自身の身体とは違う、筋肉質でうっすらと静脈が浮き出る上腕の内側を私は、多分、愛おしいと言う感情を抱きながら歯を立てた。 セックスと呼ぶな 人の欲を孕まぬこの行為は、一体何と名付けるべきか。 生殖の意味も快楽の感情も征服の動機もないコレは…、 さながら愛とは程遠い、知的好奇心。 (大切なモノって、そうだなぁ…) (多分、侑子の事じゃないかな) (素直な臨也、珍し過ぎる……) ---------- 2010,05,31 今回はネ申な友人が挿絵描いてくれました…! イラストはコチラから |