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恋愛史上主義



熊に注意
子供に注意
鹿に注意
飛び出し注意
狐に注意
落石注意

ザッと上げただけでも〇〇注意と言う標識が之だけある。なら一層、折原注意とか言う標識も作ればいい。
平和島静雄がいるお陰か幾分池袋での奴とのエンカウント率は下がってはいるものの、矢張何処から湧いて来たと言いたくなる位、アイツはいつも予想外、且つ会いたくない時を狙いすました様に遭遇する。


「やぁ侑子ちゃん」
「う、げ……」


ほら来た。
ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべながら(実際は真逆も良い所だ)ヒラヒラと手を振ってくる。
無視したい。全力で無視して走り去りたい。しかしここは路地裏で、おまけに私の後ろは行き止まり。どうあっても前に、折原臨也がいる前方に進むしかない。
ヒクヒクと口端を小刻みに痙攣させながら成るべく、成るべく足早に通り過ぎようと試みる。が、悲しいかな、真横を通り過ぎた瞬間、その細腕でガッチリと上腕部を掴まれた。


「こんな所で奇遇だなぁ。やっぱり俺達は赤い糸ってヤツで繋がっているんだねェ」
「本当、偶然ですね、こ ん な 所で。ストーカーも大概にして下さいよ、折原ウザヤくん?」
「いやだなぁストーカーだなんて。恋人である俺に対する照れ隠しか何かかい?」
「いつ、何処で、どの様な経緯を経て私達はそのような関係になったんでしょーか」
「あれェー?忘れちゃったの?あの日の夜はあんなに激しかったのに…」
「オイ、ネカマ野郎。好い加減にしねェとその舌引き千切るぞ」


どうもこの男は重度の妄想癖があるらしい。有ること無いこと所構わず厄介な事にその情報網を駆使して触れ回ってるから良い迷惑なのだ。行く先々のクライアントがいつも妙にそわそわと居心地悪そうにオドオドとしているその理由。それは正しくコレ。
折原臨也の恋人に何かあったら死ぬよりも最悪な明日が来る。
そう噂、と言うか最早脅迫の文言を自ら垂れ流しているのだ。全く誰でも良いから早くコイツを殺ってくれ。


「フハハ、そんなツンデレな君も俺は大好きだよ」
「、………」


何処までもポジティブな思考回路に溜め息すら出ない。プチリとまた私の太くて硬い神経が切断されてゆくのが分かる。あぁ本当この男、早く死なないかな。



恋愛至上主義



「今度静ちゃんに依頼してもらおうかな…」
「ん…?何をだい?」
「自称恋人と宣ってる変態の始末」


ニタリと笑った清々しいまでの笑顔に、流石の臨也もこの時ばかりは背筋が凍ったと言う。


(始末屋稼業は今日も上々)


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2010,05,26