キリキリと握力を込めている手に、力が入らない。下から上へと突き上げ押し上げ、腰を掴む掌が少し、鬱陶しい。だからうっすらと腹筋が張る下腹部に両手を起き、グイッと己の身体を上に押し上げ彼の腰の支配から逃れる。 「―――ちょっと、…タン、マッ」 「ん?…ッなに?」 「これ、私が上になってる意味ッ…がな、い…!」 それでも執拗に、悪戯に腰を突き上げる臨也のモノをキュっと窒を締め自重させる。 「えー?ナニ?聴こえないなァ?…ッ!」 「……ウザヤが」 「っとにキミは口が悪い…ねッ」 「きゃっ…あ、!」 不意にグイッと腕を引っ張られ上体が臨也の上へと崩れ落ちる。程よく冷房の利いた室内の中、侑子と臨也の身体だけが熱を持っており、密着した上体同士はその熱を更に共有し合う。 「ひっ―――やァ……ん、」 「ほらァ、ちゃん、と…っ動きなヨ…ッ」 「あっ、あ…バッ、カ……あぁ!」 ガクガクと揺さ振られ足に力が入らない。悠長に自分の下で余裕の笑みを浮かべ、悔しいけれど的確に快楽のツボを突いてくるこの男にイラッとする。だから悔し紛れに両手を首にかけ、力を込めた。 「―――ック…ちょ、侑子……?」 「…ハ、ッ…ん、なァに…?」 「俺…の事、殺す気?」 「さァ…?、っ…死ねば良いのにって、思ったこと…は、何度かあるけ、ど……?」 「ヒドッ!……そんな子に育てた覚えはないよ?」 「、育て、られた覚えなんて…っない、けど」 「もーお仕置き、だぞ?」 「え…?、ッひゃ…きゃぁぁ、あっ……!」 ニタリと悪戯っ子の様な笑みが口端に見えたかと思えば、自身が抜けるぎりぎりまで腰を持ち上げ一気に最奥の壁突き、更にぐいぐいと何度も一番感じる場所を攻め立てられ、一気に侑子は絶頂の淵を駆け登る。 「ん、うっ……あ、はぁっ…、やめっ――――」 冷気で冷やされた汗がシーツの上に落ちる。ぐちゅぐちゅと滴り絡み合う白い粘液が伊織の太股を、臨也の下腹部を、濡らす。飛びかけの意識で辛うじて目をうっすらと開ければ――― 「…く……、う…ッ…」 息を漏らし欲望を注ぎ込む臨也の顔が、目に映る。 (う、わぁ……) 欲を解放した安堵感と頂点に上り詰めた快楽と、侑子をイかせた安心感。 その顔。 臨也のイキ顔を見てしまった。 「ぁ……」 背徳感と優越感にぞくりと背中が戦慄き、事後直後のせいもあいまって侑子は再び小さく達してしまう。 (可愛い所もあるじゃない) クスリと臨也にバレないようにこっそりと侑子は口許を綻ばせる。 主導権をサラリと掴む 冷たく、熱い初夏の夜。冷気が直接当たらぬ様、そっと足元のシーツをたくし上げる行為が、何だか臨也らしくなくてこっちが照れ臭かった。 (ねぇねぇ臨也。一回ヤッてる時、甘楽ちゃんって呼んでも良い?) (は?何で) (だって可愛かったんだもん……イッた時の顔) (ダァーッもう!だから侑子が上になるの嫌だったんだよ…!) (あはは) ---------- 2010,07,04 臨也より甘楽ちゃんが好き |