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やっぱり殴って良いですか?



「ってェな!!離せ厨二鬼太郎!」
「ルセェ!少しは大人しくしろ!それから俺は厨二でも鬼太郎でもねェ!!」


ぎゃあぎゃあと五月蝿い喚き声が近付いてきたと思えば、バンッと勢いよくと、言うよりも乱暴に扉が開く。


「オイオイ何の騒ぎだよ。更年期のオバサンですかコノヤロー」
「アハハハ、ほんに晋助は元気じゃのォ」
「全くやっとの思いで生徒会からもぎ取った部室だとなんだからな。大体お前はいつも……」
「お、なんじゃァえらい別嬪さん連れとるろー」


桂のグダグダと長くてしつこい説教が始まろうとしていたのを偶然か故意か分からないが、辰馬が上手い具合に声を被せた。未だ己の手の内でジタバタと暴れる存在を思い出し、ぐいっと三人の前に突き出す。


「コイツだよコイツ」


そう言って目の前に現れたのは、流れるような綺麗な長い黒髪にパッチリと大きく少しツリ目がちの黒い瞳。ビスクドールの様な白くきめ細やかな肌にスラリとした程よい高さの身長をした女子だった。


「「天、使…?」」
「だろ?コイツだよ、この前屋上で見付けたっつた奴は」
「本当にハッとする様な美人だな」


口々に感嘆と称賛を漏らしていると不意に銀時の方からと言うか銀時から鈍い音が聞こえた。


「〜〜ッ痛ェ!いきなり何するのこの子!!」


鼻頭を抑え涙目で銀時は訴える。


「五月蝿い。文句ならそこの眼帯野郎に言え。大体なんなのこんな所まで無理矢理連れて来やがって」


皆、開いた口が塞がらない。端正な顔と清楚な雰囲気からは大凡真反対の酷く口の悪い言語が発される。どうやら口より先に手足の方が先に出るタイプのようで、挙げ句、口も去ることながら相当腕っ節も強いらしく、少し力を込めた位じゃあ胸倉を掴む腕はびくともしない。


「何がしたいの?本当、なんなの?こちとら散々付き纏われて迷惑してんの。それに……」


矢継ぎ早にまくし立てる彼女の言葉を遮ったのは紛れも無くその原因を作った本人。


「俺達の歌姫になってくれねぇか」


そう深々と頭を下げる高杉に、その場に居た全員が目を見開く。あの、高杉が他人に頭を下げている、だと…?
皆が己の目を疑わずには居られなかった。一瞬キョトンとしてコイツは何を言っているんだと言った目線を高杉に向けた彼女は、ニッコリ笑って一言。



やっぱり殴って良いですか?



そのあと必死で三人で止めに入ったのは言うまでも無い。


「面倒臭いからヤダって言ったよね、私」
「おう」
「迷惑だから関わるなって言ったよね」
「あぁ…」


目線を外さず真剣な目に捕らえられる。


「それでも…、お前に歌って欲しい。俺達のバンドで歌い奏でて欲しいんだ」


(私の音楽は安くないのよ)


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2010,07,01