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- ナノ -


求めるモノは一つだけ



もう終わりなのね

そう呟いた言葉は全てを浄化する





信じる事を忘れたの
信じる事をやめたの


「槙乃、ボクの言う事信じてくれへん…?」


裏切りは蜜の味だなんて誰が言った…?
裏切りは鉄の味。
生臭くて独特の苦味と酸味を持つ血の味。
そんなモノはいらないの。


「ボクは不器用やからキミを傷付けてしまうし、嘘も吐いてまう…」


嘘も裏切りも別にどうだって良い。
そんな事で傷付くほど可愛らしい人間じゃない。
でも苦いものは嫌い。味が無いものも大嫌い。
甘いモノが欲しいの。


「せやけど、何よりも大切なんや。全てを捨ててしまっても、絶対に槙乃だけは棄てたりはせぇへん」


信じる事を忘れた彼女にとって


「あぁ…それすらも ウ ソ ?」


信じる事は苦くて不味い。
吐かれた嘘も吐いた嘘も無味無臭。
喉を通る時にチクリと一瞬痛むだけ。
それじゃあ甘いモノはナニ?


「槙乃…」


ふと、名前を呼んだそんな彼の言葉に甘さを感じた。


「甘い…」

「どないしたん?」


ギンはそっと顔を覗き込む。


「どうしてギンの発する言葉は甘いの…?」


いきなり顔を上げた彼女はそう尋ねてきた。
分らない。本当にそう言った顔で彼女はギンの瞳を見つめる。
何か分らない甘いモノ。


「それはなぁ、槙乃のことを愛してるからや」

「愛、してる…」


彼女はその言葉を何度も反芻するようゆっくりと呟く。


「ギン…甘いよ」


彼女は嬉しそうに目をキラキラと輝かせ微笑んだ。


信じる事を忘れた彼女は、ついには信じないと言うことも止めてしまった。
だけどやっぱり信じる事は出来なくて、甘いモノを求めたの。

嘘も裏切りも熱意も正義もみんな甘くない。
だけど彼の言葉だけが全部『甘い』
『愛してる』そう言った彼の言葉が格別に甘いくて、あぁ……信じないけど愛してる。

ギンの発する言葉は全部甘い。
だからきっと彼の言葉なら


その嘘すら愛しい


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2009,04,22