×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


紅差す目尻に金、百両



「飽きもせずわっちの所によく来なんしなぁ」


受け入れてくれる?受け入れて貰ってるの間違いでしょうに。


「いいだろ別に。こっちが金払ってんだ、何も文句はねェはずだ」


甚だ可笑な事を言う。女郎なんぞに身を落とした阿婆擦れが、などとほざく輩はわっちがその口全て縫い付けてくれよう。


「して、今夜は何用で?わっちに抱かれる気にでもなったかえ?」
「はは、ふざけんな。だぁれがテメェなんぞに抱かれてたまるか」


身体を売ったとて何も変わりゃしないさ。心を明け渡したとてなんになる。


「酷い事を言いなんし」
「本当の事だろうが」


金を払い女郎を抱く。寝物語りを囁き遊女を口説く。そんなのは莫迦な男のとんだ勘違い。


「ふふふ、いつまで持つやら楽しみじゃ」


金を貰って男を抱く。夢物語りを囁き客を誑かす。


「ほざけ」


男が抱きにきたんじゃありんせん。わっちが抱いてやってりんす。あれよあれよと落ちてゆく男の様は、あな可笑や。


「アンタみたいな男は何人も見てきたえ」


琴鶴屋の花魁はあな恐ろしや。


「結局最後にはわっちに抱かれた奴もいたし、抱かれずに去って行った奴もいたさねぇ」


惚れた男は数知れず。破滅なんぞはまだ良い方。貢がされ狂わされた挙げ句、死ぬにも死ねず廃人さ。


「だから俺も大して珍しい客じゃないと」


琴鶴屋の花魁には気を付けな。


「頭の回転の良い男は嫌いじゃないよ」


アイツは人を喰い殺す魔物さ。


「それすらも分かって通う男。そんな輩は莫迦な餌」


ホレたハレたは御法度とは良く言ったもの。だから喰い殺してあげりんす。二度と惚れぬ様。二度と惚れられぬ様。


「こりゃまた手厳しいこった。俺もいつかは喰い殺されちまうってか」


不敵な笑みを浮かべあどけない仕草で絡めとる。手練手管なんて可愛らしいもんじゃぁない。


「骨の髄まで、ね」


抱かれたら最期、甘酸っぱい快楽と引き換えに魂諸共地獄逝き。


「嘘か真か、そんなものはわっちの言葉にはありんせん」


琴鶴屋の人喰い太夫とはわっちのことでありんす。


「あるのは地獄のみ」
「違いねぇ」


どうじゃ、おんしも抱かれてみるかえ?



紅差す目尻に金、百両



(どうやら俺もとっくに地獄に居る様だ)


----------
2009,09,28