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毀棄



斬って斬って斬り伏せて、血を…拭う。死屍累々とは良く云ったものだ。
折り重なる死体。呻く肢体。お前は何も護れない、と。誰も助けられない、と、耳元で囁き続ける。ただ血を浴び敵を斬り殺し、そして、前進するのみなのだと……

何者をも寄せ付けぬ白き " オ ニ "

それでも構わないと思った。
何かが変わるのなら。
何かを変えられるのなら。


「、…高、杉……」


(逃げ出したのは俺の方なのか…?)

冷え切った眼差しが、酷く胸を焼く。
どうしてお前等は…と問うている。

一番憎んでいるのは俺で。
一番怨んでいるのはヅラで。
一番、一番泣いているのはアイツ、だ……

夢に魘されていた時に見たアイツの表情と、奥に潜む哀しみがダブる。


「クソッタレが…、!」


お前は夜叉― オ ニ ―なんだと、呪詛の様にずっとずっと耳から、頭から離れなかった。気が狂いそうな時、手を差し延べてくれたのは誰だ。くじけそうになった時、士気を高めたのは誰だ。
天人を斬り、退路を守る。ヅラに背中を預けるのはあの時と同じ。ただ、左右を固めてくれる友は居な、い。


「次に会う時は仲間も何も関係ない」


悔しいのは俺も同じだ。
本当、俺達は友一人変えられねェ……
友一人、支えられねェ…、


「「全力で、貴様(テメェ)をぶった切るッ!」」


哀しいのは俺達だって同じだ。格好付けてんじゃねェよ馬鹿が。


「せいぜい街中でばったり会わねェ様に気をつけな!」


(なぁ、独りで背負うな、よ)

向けた刀の切っ先に、覚悟を燈す。ニヤリと細められた隻眼は挑発と哀愁。



毀棄



(それでも俺達は友だ)


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2010,05,07