「ぷっ…!」 出会って直ぐ、笑うしかなかった。音信不通になり、巷では斬った斬られたなどと騒がれて居たから一体どんな事件に巻き込まれていたのかと思えば…… 「く…ッ、アハハ!何?失恋でもしたの?」 妙ちきりんな髪型のヅラ、基、桂小太郎に再会した。 「失恋じゃない、イメチェンだ!」 「はいはいイメチェンね。イメチェン」 しかし一度ツボに入った笑いは、そうそうどうにか出来るものでも無く、取り敢えず目に涙を湛えながら笑い転げる。 「いい加減にしないか全く。そんなに短い髪が面白いか?」 「ん?いや、面白いって言うか…プッ…クク、だっ、て……」 まるで会話にならない。ハァ、と頭を抱える桂を横目に、やはり腹を抱えて笑うしかなかった。 「いやだってさぁ、そんな髪型になったヅラを見た銀時と高杉の反応を想像したら…」 やっと治まってきた笑いを噛み殺しつつ会話を続ける。 「いやァでも、さっぱりして良かったんじゃない?あの長いヅラ、鬱陶しかったし」 「ヅラじゃない、桂だ!あ、いや違う、地毛だ!」 「はいはい。小太郎くんの長ーくてウザーい髪の毛は地毛でしたねー」 ケラケラと小馬鹿にした笑みを浮かべながら、そっと短くなった毛先に触れる。 「あーあー、勿体ないの」 そう言った彼女の瞳はどこか哀しそうで、先程まで散々笑い転げていた人物と同じとは思えなかった。スッと二度、三度と髪を梳き、目を伏せる。 「……、…た…」 「ん…?」 「…よか、った」 髪を触っていた手はいつの間にか桂の胸元に当てられていた。 「本当、良かった。切り落とされたのが髪、で……」 「お前……」 少し震えた声と手。そっと頬を撫でれば濡れていた。 「だって…だっ、て……」 振り絞る様な声と共に、バッと上げられた顔は確かに泣き顔……ではあった、が… 「こんなに髪型一つで笑えるのって、ヅラだけだもん!」 「貴様…、泣くほど可笑しいかッ!?」 Lost love (でもさ、失恋して髪切るのって古くない?) (だから失恋じゃないと言っているだろう…!) ---------- 企画:十人十色 タイトル:Alstroemeria 2010,05,03 濁点 |