「おい、貸せ」 「え?あ、はい」 「おっと。段差があるから気をつけるでござるよ」 「あ、ありがとう」 「あーもーそんなに動いたらダメっスよ!」 「、っごめんなさい…」 天気が良いので洗濯物を干そうと甲板に出ればあっという間に晋助に洗濯物を奪われ、少し蹌踉ければすかさず万斎に支えられ、それでも全部を晋助に干させるのは悪いので手伝おうとすれば、また子に怒られた。 「もうみんな、そんなに心配しなくても大丈夫なのに」 仕方なく近くにある丁度良い高さの貨物箱に腰を下ろせば、何処とも無くスッと日傘が差される。 「武市さんまで」 「ふふふ、仕方ないですよ。大分大きくなってきましたからね。皆さん心配なんですよ」 「私はまだまだ平気なんだけどね」 よしよしとお腹をさする。 臨月間近になってからと言うもの、前にもまして鬼兵隊の皆は過保護になった。 それくらい何て事ないのに、と言う事まで我先にと最早争奪戦のようにして仕事を奪われてしまう。確かに心配してくれるのは嬉しいが、些かやり過ぎの様な気がしないでもない。でも、それだけ自分は愛されてるんだなと思うとその心遣いを無下にする事も出来ず、今日みたいなやり取りを繰り返す事になっているのだ。 「ったく、ちったァーじっとしてらんねェのか」 「でもまだ動けるし…」 「馬鹿、何かあったらどうすんだ」 「私は大丈夫だって。この子も聞き分けが良いから洗濯物くらいは―――」 「ッ、そうじゃねェ……」 「え?」 「俺が…気が気じゃねェんだよ……」 そう言うと晋助はフイと顔を下に向け、大きくなったお腹を優しく撫でた。 (あれ…?もしかして照れてる?) 俯き加減の晋助の耳がほんのりと赤い。そんな普段からは大凡想像もし得ない、泣く子も黙る鬼兵隊総督の姿に自然と笑みが零れる。 「何笑ってやがる」 「ううん。ただ、ありがとうって」 「訳分かんねェ…」 相変わらず愛おしそうにお腹を撫でる晋助に、子煩悩な父親の影を見た。 ねぇ、知ってる? アナタのパパはこんなにも私達を大切に思っていてくれてるのよ? だから早く産まれておいで。 みんなアナタを待ってるから。 (晋助様ぁ!産まれた赤ちゃん晋助様の次に抱っこしても良いっスか!?) (何を言っているですかまた子さん。私が先に決まっているでしょう) (いやいや拙者に決まっておろう…!) ---------- 企画:白黒 タイトル:花影 黒ver./drrr,臨也,死 2010,06,15 濁点 |