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緩やかに溶けて、一つ



ドサリ、と覆いかぶさる身体。その距離は腕一つ分よりも近く、かといって密着している訳でもない。拒めばきっと直ぐにでもどいてくれる。けれど拒む事は無い。ただじっと、身じろぎ一つせず組み敷かれた手首から伝わる温もりを感じていた。


「ぎん、とき……」


薄暗い部屋の中ベッドの上に組み敷いた彼女は、真っ直ぐに俺の瞳を見詰める。開いた口からは静かに俺の名が呼ばれた。


「…ッ、悪い。あ、いや…その…」


勢いに任せ押し倒したくせに今更吃る自身に、ほとほと嫌気がさした。


「、…嫌ならそう、言ってくれ……」


ギシリと軋むスプリング。少し目線を外しそう告げた。
生まれてこの方女を無理矢理犯した事は有れど、気遣い、躊躇い、まして両者共に素っ裸に近い状態だと言うのにその肌に触れるのすら憚る事など、一度もなかった。だけどどうだ、こんな情況に自らしたにも関わらずこの様だ。

(クソッ…生娘じゃねェんだっつの)

己の行動とは思えぬ不可解な行動に苛立つ。けれど、コイツだけは例え理性が切れたとしてもどうしても無理矢理モノにする様な真似はしたくない。それだけ彼女の事が大切で愛おし証拠だ。


「もう…、大丈夫、だから」


雪乃は不安げな色を瞳に宿しながら、それでもしっかりと腕に手を絡ませる。その細い指が妙に色っぽかった。
優しく唇にキスを落とし、チュッとリップノイズを響かせる。


「雪乃……」


低く、熱を孕んだ吐息が耳を掠める。こんなに愛おしそうに名前を呼ばれた事があっただろうか。ビクリと身体が震えるのを自覚しつつ、ゆっくりと背に腕を回す。それを確認すると銀時はゆっくりと首筋、肩、鎖骨とキスを落としてゆく。


「…っん、……」


鼻にかかる様な甘い声。それを確認してから右手を脇腹から骨盤、太股とスライドさせ少し躊躇いがちに茂みに指を這わせる。


「ッ、」


まだ全く濡れていない。
雪乃の顔を覗き込む。


「う、ェ…わ、私、その……は、初めて、…だか、ら……」


しどろもどろ、最後の方はゴニョゴニョと消え入りそうになりながら、雪乃は答えた。驚きに見開かれる銀時の目。
なんと言うことだろう。こんなに嬉しい事はない。
クスッと喉で笑い額にキスを落としてから太股の内側に舌を這わす。ゆっくり何度か往復させてから更に広く股を開かせ、茂みの中へ舌を這わせた。


「へッ…?ヤ、銀時…!?」


その行為に驚いたのか、雪乃は慌てて股を閉じようとするが、それを片手で押し止め舌で襞を割り蕾を舐める。

――――じゅるり


「ひゃ、ッ…」


今まで出した事の無い様な声が口を付いて出る。その反応に気を良くした銀時は優しく、丁寧に何度も蕾を舐めたり膣の入口に舌を差し入れたりした。
雪乃はただ、必死に声を上げまいと唇を噛み締め、シーツを握る。
しかし上がる息遣いと快楽の波は抑えることは出来ない。くぐもった声が鼻から抜ける。


「…ん、……ふっ…」


チラリと見上げた先には、瞳にうっすらと涙を湛え声を押し殺しながら頬を紅く染める雪乃。それは今まで抱いたどの女よりも煽情的で艶やかで、情欲をそそるものだった。

(煽ってるとしか思えねェ…)


「雪乃、」


焦った様に名前を呼べば、トロンとした瞳で俺を見上げてくる。堪らなくなり噛み付くように口づける。舌を絡ませ何度も何度も角度を変えてはキスを貪り、唾液が口端から零れ落ちるのも構うことなく雪乃を求め続けた。

トントン――――

苦しいと訴えかける雪乃の右手でやっと唇を離す。そして離した唇と唇を銀色の糸が繋ぐのを満足げに見遣る。


「雪乃、好きだ…愛してる」


再び指を股下に這わせれば、舌で愛撫したせいもあるが今度はちゃんと湿っている。静かに人差し指を差し込めば、やはりまだ狭かった。それに少し眉を潜めた雪乃の腕を自身の背中に回させる。


「辛かったら、爪、立てろ」


雪乃はコクりと頷き、銀時の肩口に顔を埋める。
それを確認してから銀時は再び指を動かす。クチュクチュと粘り気のある音が次第に大きくなり人差し指に加え、中指も中に挿す。クチャリと中で関節を折り曲げれば

「アッ…」

と声が上がる。
さらにもう一本指を追加し、バラバラと不規則にまさぐりながら掻き混ぜ、親指で蕾を擦り付けてやる。


「ひ、…やぁ…あっッ」


銀時の首筋に噛み付き、何とかこの感じた事のない快楽を散らそうと必死になる。

(う、わぁ、…なんか身体がヘン、だ……)

首筋に吸い付き声を抑えようとするが、そんな雪乃の意に反して嬌声は漏れる。しかし、ふと雪乃は自身の太股に何か当たるモノがある事に気付く。


「銀、時…?」
「あ…?」
「何か、当たってる…」


タオル越しに感じるモノに目線を下に移せばこんもりも盛り上がっている。


「っ…あー、悪ぃ…」


銀時は大分濡れ解れたであろうソコから指を引き抜き、罰の悪そうな顔をし、腰に巻かれたままのバスタオルをスルリと外した。すると赤黒く反りたったナニが顔をだす。


「あ……」


顔を一気に赤くして口をパクパクとさせる雪乃。


「痛かったら…つーか多分絶対ぇ痛ェけど、遠慮しねぇで言え」


そう言い終わるや否や肉欲を亀裂に宛がい腰を突き出す。


「い、ッ……」
「馬鹿、力、抜けッ……」
「あ、…ちょッ…、ム…リ…っ」


ズクンとえも言われぬ違和感が下半身を襲う。ヒリヒリと肉が押し広げられてゆくのが分かる。


「や、痛…い……!」
「大、丈夫…だ、……ッ」


痛みを紛らわす為に胸を揉みしだき指で飾りを転がす。
ぐちゃり、ミチッ。
一度も男性を受け入れた事のないソコは、予想以上にきつく狭かった。


「…やァ……イ、タッ…」


泣き声に近い抗議に、押し進めていた腰を止め流れる涙を舐めとり、チュッチュッと額に瞼に頬にキスをする。


「どうする…やめるか?」


額に汗を浮かべる雪乃を心配そうに見つめ銀時は問う。しかし雪乃はフルフルと首を横に振るう。


「無理、しなくて良い」


髪を撫で優しく諭す。


「ううん、へい…き」


苦痛で眉間に寄せていたシワが、柔らかい笑みへと少し変わる。


「銀時を、もっと近くで…感じたい……か、ら」


そうニッコリと笑う雪乃はとても美しかった。

(心底惚れた女を抱くっつーのはこんなに興奮するもんなんだな)

ゴクリと生唾を飲み込む。白く柔らかい首筋に食らい付き、真っ赤な花びらを無数に咲かせてゆく。同時に腰を更に捩込みどうにか根元まで埋め込んだ。


「っ、ハァ……全部、入った…ぜ」


下腹部に圧迫感。乱れた息遣いが耳元で甘く囁く。うっすらと目を開けば肩で息をし、優しい眼差しを向ける銀時。
フゥと息を吐き気遣うように笑いかけられる。私はそれに応える様、銀時の頬に手を宛て口づけた。少し驚いた様子の銀時だったがきつく抱きしめ、動くぞと告げてきた。
深い息で上下する厚みのある筋肉質な背中。ゆるゆると開始された律動に思わず爪を立てた。ミチミチと肉同士がすれる音。それがだんだんと湿り気を帯びるにつれ、雪乃の口からも甘く官能的な声が奏でられる。


「は、ァ……ん…ア…ッ」
「ここ…か、?」
「ひゃ…アッッ―――!!」


ニヤリと笑い一際大きく反応する場所をピンポイントで突く。
しなる背中、濡れる睫毛、蒸気する頬。愛おしくて愛おしくて仕方がない。

(こりゃァもう他の女じゃ勃たない、な…)

そんな事を考えていると、ふいに名前を呼ばれた。ただそれだけなのにズクンと自身の質量が増す。


「チッ……」


(相当ヤバい、な…)

直ぐにでも射精してしまいそうな衝動を堪え、パンパンと強く腰を打ち付ける。


「あ……ハッ…や、ぎん…とき、なん、か…ァ、へ、ん」
「あァ…イけ、よ…ッ」
「っ…ひッ……、ッッ!!」


ビクンと弓なりに背を膨らませ雪乃は絶頂を迎え、同時に膣がキュッと収縮し自身を締め上げる。


「…ック………」


最後の気力で二、三度雪乃の最奥を打ち付けそのまま欲を放つ。雪乃は、生暖かい液体が子宮を満たし、膣内で弛緩してゆくのを朦朧とした頭でうっすらと感じていた。



「……ん…、」


それからどれ位の時間が過ぎたのだろう。雪乃はパチリと目を覚ました。
ペタリと汗ばんだ肌の感触。手を付き目を身体の下に見遣れば、自分が銀時の身体の上で寝ていた事に気付く。そこから下りようと身体を動かした雪乃に気付き、銀時は閉じていた目をゆっくりと開く。


「あ…銀時」
「気にすんな……オラ、まだ寝てろ」


ぽんぽんと背中を叩かれ抱きすくめられる。身体の上から退く事を諦めかわりに銀時の首の後ろに手を回す。その行為に気を良くしたのか右手で髪を手で梳き左手で軽く臀部を撫でる。


「……ッ…に、…………で」
「ん…?」


ぼそぼそと雪乃は耳元で呟く。


「         」
「ハッ、あたりめェだろ」


耳を真っ赤にさせて囁いた雪乃の言葉に己が本格的に破顔するのが分かった。


「俺も、だ」



緩やかに溶けて、一つ



(私は貴方に全てを捧げます)
(だからどうか絶対に離さないで)

(離してたまるか、死んでも俺について来い)


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2010,03,31