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兎追いし彼の星



うだるような暑さ。皮膚を焼く陽射し。ジリジリと地面からの照り返し熱で地表五センチの高さにうっすらと蜃気楼が生まれる、そんな例年稀に見る酷暑の地球の夏。いつもは昼と無く夜と無く人と天人で賑わう歌舞伎町ですらこの暑さのせいで日中、外に居る者は殆ど居ない。そんな中、全身黒尽くめに本来肌色が見えるべき腕や脚、更には顔まで包帯で覆った頭でも沸いたのかと目を疑う様なその通気性皆無の見るからに暑そう且つ怪しい人物が江戸城下を闊歩していた。


「暑い……」


久方振りに訪れた地球はこんなに暑かっただろうか。汗をかく以前に太陽の光が強すぎて本当に肌が焼けてしまいそうだ。


「地球ってこんなに暑かったけ?」


黒い服白い包帯の無彩色の中、ピンク色の髪が一際目立つ夜兎。
紫の番傘が作る申し訳程度な日陰から極力出ぬよう気をつけながら、目的地の看板を捜し歩く。


「――――万事屋…ここだ」


達筆な筆遣いで書かれた看板を見上げる。


「このキーンと来る感じがたまらないアルな」
「やっぱり夏はプールとかき氷ですね」
「ったくこのクソ暑いのにほんと元気だなお前ら――――ア、レ…?」


ワイワイとかき氷で涼を取りながら市民プールから帰宅した万事屋一行の目に止まったのは、紫色の番傘を差し黒いチャイナ服、肌の一切を隠す様白い包帯で覆ったピンク色の髪をした人物が万事屋の看板を見上げといる姿。


「おい神楽……」
「―――銀さんあれってまさ、か…」


気配に気付いたのかピンク色の髪を揺らし顔を覆っていた布を解き振り返る。


「えっ……嘘、アル…そんな…」


露わになった白い肌と透き通る蒼い瞳が傘の影から搗ち合う。ピリピリと緊張した空気が張り詰め、暑さのせいではないジットリと嫌な汗が流れる。


「か、かむ―――「神楽ちゃん…!」
「姉ちゃん…!」


銀時がそうであろうと踏んだ人物の名を口にした直後、神楽が叫ぶと同時に自分達が知っている声とは違う、幾分落ち着いた大人の声が神楽の名前を呼んでいた。


「「姉ちゃん!?」」


頓狂な声を上げる銀時と新八を横に神楽は姉と呼んだ人物に走り寄る。


「神楽ちゃん久しぶりね。大きくなって」


腰の辺りにひしと抱き着いた神楽の頭を優しく撫でる。


「急にどうしたアルか?何かあったネ?」
「何かあったっていうかほら、可愛い妹と馬鹿な弟が喧嘩したって父さんから聞いたから様子見に、ね」
「心配いらないネ、みんながいるから大丈夫ヨ!」


屈託無く笑う神楽の笑顔に自然とこちらも頬が緩む。



兎追いし彼の星



「あのぉ…もしかしなくても神楽のお姉さんですか?」


感動の再会を繰り広げている二人に銀時は怖ず怖ずと尋ねれば、そうだったと言う様に向き直り丁寧に挨拶をした。


「申し遅れました、ワタクシ神楽と神威の姉の雪乃と申します。いつも神楽がお世話になってます」


ニコリと柔らかく笑った笑顔はどこか見覚えがあり、ブルりと一瞬背筋が震えた。


(神楽ちゃんって三人兄妹だったんですね)
(つーかお前ら兄妹似過ぎじゃね?)


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2011,04,13