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一昨日、上からの命令で移動となった。この地位になっての移動とは、詰まるところまぁそのアレだ。本部への昇格。……だと思っていたのに。いたのに、だ。


「第七師団団長補佐だとぉぉぉ!!!!」


怒り心頭の雄叫びを上げながら船室のドアを蹴り飛ばす。蹴り飛ばされて蝶番が外れたドアは、それがドアであったのか一見しただけでは分からない姿で廊下の壁にめり込んでいた。


「何が『P.S.もう少し部下は大切にしようね(はーと)』だ!お茶目なじぃさんって柄じゃないだろ!」


頭をガシガシと掻きながら一人悪態を撒き散らす。


「『君の実力を買っての事だ』なんて言うなら、なんで団長補佐なのよ!昇格って言うかむしろ降格じゃない!!」


先程から船室のドアを破壊したり上司の悪態を吐きまくっているこの人物は、一応この宇宙船のボス。この宇宙船と言うのはもちろん宇宙海賊春雨第六師団のもの。
つまり、あの泣く子も黙る残虐非道の宇宙海賊集団、春雨の第六師団団長と言う訳だ。だから今回の人事異動場所が団長“補佐”と言うのが納得いかないのだ。大体この前の任務だってちゃんと星一つ消してきたし、それ以外の任務も迅速且つ正確にこなしてきたはず。……あー…いや、確かにこの前の任務ではうっかり船員の半分以上を殺しちゃったけど。でもそれ以外は特に何、も、……あぁそのまた前の取引でもちょっと先方とうちの団員殺っちゃつたけど……いやでも邪魔だし役に立たないしムカついたんだからしょうがないじゃない。
しかしいくら文句を言っても決まってしまったものはしょうがない。短く溜め息を吐くと机上のリボルバーを大腿部のホルスターに突っ込み、黒い漆塗りの仕込み刀を引っ掴む。


「仕方ない」


持って行くものなどその三つだけで十分。
信頼に足る部下?
軍資金と言う名の賄賂?
先方への菓子折り?
そんなものは必要無い。
使える手駒は向こうにもある。
弱いのなら潰せば良い。
気に喰わなければ殺せば良い。


「行きますか」


生憎運が良い。合流地点までは丸一日もかからない。向こうの団長とやらがどんなヤツか楽しみだ。ニヤリと口端を吊り上げ操舵室へと向かう。しかしこの時、意気揚々と出掛けた先にとんでもない問題児が待っているなど知る由も無い。



暗中模索



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2009,11,03
2010,05,22 加筆修正
オッサン好きのオッサン好きの為のオッサンシリーズ