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Variety is the spice of life.



帰宅して直ぐ、ピシリといつもと違う空気が肌を撫でる。
明日は遅番だからとゴールドステージにある自宅ではなく下位層にある虎徹の家に帰って来たのだが、玄関に入った瞬間、張り詰めた空気を感じるのだ。そのままリビングまで歩みを進めればソファにもたれ掛かる様にして座っている家主。


「ただいま」
「ん…ああ、おかえり」
「何かあった?」
「んにゃ別に」


嘘、だ。
近付くな、触れないでくれと言っているじゃないか。
氷嚢で先日負ったばかりの右肩を冷やす姿は正に手負いの虎。重苦しい空気に潰されて仕舞わぬよう、ぐっと息を飲み込む。キッチンでグラスに冷えた硬水を注ぎ一口。グラスを片手に虎徹の真隣りに腰を下ろす。


「バニーちゃんと何かあった?」


小さく横に首を振る。


「じゃあ…ロイズさん?それともマーベリックさ…………っ」


語尾は消え、急に視界が反転し、後頭部に衝撃。グラスは手から滑り落ち、絨毯を濡らす。


「こてッ……ンン…っ!」


押し倒されたまま唇に噛み付かれ、無理矢理こじ開けられた口内に潜り込んできた熱い舌が執拗に掻き乱す。


「、ん………や…、はッ…」


息が続かない。
酸素を求め口を開けば開く程、舌に絡め取られ零れた唾液が首筋まで伝う。トレーニングはサボりがち、とは言っても日頃から犯人逮捕に人命救助を行っている十年来の現役ヒーローの肉体は右手を縫い留められているとは言え、胸元を押し返そうと叩いても一切びくともしない。いよいよ酸欠で意識が朦朧とし始めてきた時に、左の掌が押したのは右の肩。


「―――――イッ…!!」


瞬間、飛び退いた身体。肺を満たす酸素。ハッとした顔で肩を押さえる虎徹。


「ごめっ、大丈夫!?」


乱れた呼吸の事など忘れ慌てて上体を起こし手を伸ばせば、触れる前に叩き落とされる。


「…ぁ…悪ィ……ほんと、」
「えっ…?いや、私は平気……」
「いや、今日はもう寝ろ。俺は此処で寝るからお前はベッド使え」
「でも虎徹、何かあったんじゃ……」
「セラ」
「―――――っ」
「今夜は何しちまうか分かんねぇから。な、お願いだセラ」


困った下がり眉。乱暴に求めてしまった罪悪感。余裕の無い、彼なりの精一杯の懇願に黙って引くしか無い雰囲気を悟り、怖ず怖ずとソファから立ち上がりリビングを後にする。寝室のドアに手を掛けるも中々開ける事が出来ない。
ギュッと手を握り深く二、三度深呼吸。覚悟を決め、開けたドアは寝室では無くもと来たリビング。ブラウス、スカート、ストッキング、ブラにショーツを脱ぎ捨てそのままずかずかと大股でソファまで戻り今度は逆に、虎徹を押し倒し馬乗りに。


「ちょ、おま………ンッ」


先程されたのと同じ強引なキス。
真っ裸な事。押し倒された事。今、唇を奪われている事。彼女の突拍子も無い行動に何が何だか分からずキャパオーバーで目を見開いたまま固まる。


「今日は私が上になるから虎徹はそのまま」
「お、おい、セラ!?」


既に上半身は包帯だけなので、迷う事無くベルトに手を掛けボタンを外しジッパーを下ろしスラックスを無理矢理に下げる。


「待て待て待て…!!お前酔ってる?いや、んな訳ないよな。え、セラさん…?」


制止するも女性とは言え成人した、それも本気で押さえ付けにかかったセラを止めるには、万全でない右肩を抱えた虎徹には少々無理があり、意外に呆気なく膝下まで下ろされてしまう。
けれど、トランクに手が掛かった時に漸くセラの力が弱まり、何とか上半身を起き上がらせる事が出来た。


「虎徹は優し過ぎるよ………」


ぽつり、と呟き。


「八つ当たりでもなんでもすれば良いじゃない!そりゃあ私だって乱暴にされれば抵抗もするし、怒るわ。でもね、次の日には大半、一週間も経てばすっかり笑って赦せる程の器の大きさはあるわよ」


そして少し怒気を孕んだお説教。
頼ればいいのだ。迷惑を掛ければ良いのだ。愚痴って傷つけて怒らせればいいの。それでどうにかなってしまうような、そんな中途半端な気持ちで子持ちの男ヤモメのヒーローの事なんて好きにならないし愛さない。


「セラ…お前……」
「私にだけはヒーローじゃなくても良いんだよ…?だからほら、言って。今夜はお前が慰めてくれって」


抱き寄せた身体は外気に当たっていたせいかヒンヤリと冷たく、熱を持った身体を癒やすには丁度良かった。
ちゅっと長い睫の瞳に唇を落とし、柔らかい背を抱きしめる。


「じゃあ、お言葉に甘えてシて貰おうか、な…?」


表情も纏う空気も幾分か和らいだ虎徹の切なそうな笑顔に、そっとうなずき、最後の布切れに手を掛け引きはがす。
一旦膝から下り膝を折り前屈みになって股の間に顔を埋めれば、まだ勃ち上がっていない雄を優しく両手で包み込み舌を這わす。先端を口に含み右手で根元を、左手で袋を揉み拉きながらゆっくりと唾液を絡ませて丁寧に何度もグラインドを繰り返せば、徐々に淫猥な水音大きくなり、それに比例するかのように口腔内のそれも熱く熱を持ち、硬く質量を増す。


「ふ……、ん…っ……、は……」


ぴちゃぴちゃと淫靡な響きと時折見上げてくる扇情的な眼差しに一層の興奮を覚え、無意識に腰が浮く。臆面もなく猛る雄を舐め上げる赤い舌、滲み出る先走り液と唾液が混ざり合いテラテラと反射する粘液。それに加えての白い素肌と赤黒い己の欲望の対比は目に毒、だ。


「……っ、…ちゅっ……、は……」
「ん……ッ…は、ぁ…セラ……」


吸い扱かれる度に沸き上がる快楽に息が上がり始める。
ちゅぱっといやらしい音をさせ、一旦離された唇。それを見計らってひょいと腰を持ち上げ膝上に。


「わわっ…!」
「ッ……はは、色気無い声」
「なっ、煩い…!」


持ち上げた時に一瞬、痛みに歪んだ顔は見なかった事に。心配し過ぎも良くないからね。
伸ばされた指は割れ目をなぞり、くちゅくちゅと熟れ膨らみ主張する蕾を親指の腹で、人差し指と中指の二本で膣内を器用に掻き乱し慣れ解す。


「うわ、びしょびしょ」
「っ………」
「そんなに美味かったか、俺のは」
「ば、か……、」


ニヤリと笑顔。同時に乳房の突起を転がされれば甘い吐息が自然と漏れ、しとどに濡れた茂みから溢れた愛液が内股を伝い、跨がった虎徹の股すらも濡らす。そろそろかと阿吽の呼吸でタイミングを見計らえば虎徹はサックを慣れた手つきで被せ、その間セラは右手を左肩に添え、腰を浮かす。左手で体重を支えながらそっと反り立ったナニの先を割れ目に宛がえば、強い圧迫感。


「っ…あ……はッ」


下から突き上げてくる感覚に、思わずこわばる身体を深呼吸で解す。ようやく腰を下ろしきり根元までくわえ込んだ下の口はヒクリヒクリと脈打つ。己の身体の重みと重力で普段より深くまで突き刺さった雄に強い快楽を感じ生唾を飲む。
がっしりと腰を掴む腕に手を添え、自ら腰を上下させお互いの良いところを探る。ここ、と言う所に擦り付けつつ不規則な上下運動を繰り返せば更に中で増す質量。どちら共分からぬ鼻に抜ける吐息が耳を犯す。
しかしふと、気がつけば左の肩口に鋭い痛み。皮膚に食い込む犬歯が程なく表皮を引き裂きうっすらと滲む血液。思わずうっ、と息を飲み何事かと抗議しようとすれば、痛みで熱を持ったそこに冷たい雫がパタリポタリ。快楽からくる息の乱れとは明かに違う震える呼吸。

――――――泣いてる。

嗚咽を噛み殺し食いしばる歯に、噛まれた肩の痛みはそのまま虎徹の心の痛みの様な気がした。
そっと背中に回した腕で子を諭すよう、ゆっくりそっと撫であやす。


「いつも、ありがとう」


逞しい首筋にキス。


「"私達"を助けてくれて。街を守ってくれて」


男の子だって、大人だって………ましてヒーローだってそんなものは関係ない。


「たくさんの笑顔と勇気をくれて」


悔しい時、寂しい時、哀しい時、やる瀬ない時―――――
そんな泣きたくなった時は声を上げて、みっともなく顔をグズグズにして泣けばいい。


「私を、愛してくれて――――ありがとう」


それくらい、私が簡単に受け止めて上げるんだから。
達していない中途半端な熱を持て余しどうしたものかと苦笑するも、慰めると宣言したからには最後まで責任は持ちますよ、と。
そっと腰を上げ、元気を無くしたソレを引き抜いてから再びギュッと胸元に抱き寄せ添い寝の体制へ。



Variety is the spice of life.



多様性は人生の香辛料。
つまり、いろいろなことがあったほうが人生面白いって事。


(あらセラ…クス……、ベッドの上ではちゃんと虎さんなのね)
(へ、?え、ネイサン…!?)
(ここ、キスマークじゃなくて歯型だなんて随分過激ネ)
(や、これは違っ…!いや違くないけど違うから…!)


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2011,06,12