「イテテテテ…!」 情けない間の抜けた声を発するのは、当然の如く再入院を言い渡された虎徹。 「だから無理に動くなって何回も言ってるでしょ」 「いやいや無理じゃねぇよ、ちょこーっと体の運動をだなぁ」 「それが駄目だって言ってるの」 あの後、医者と看護婦にこっぴどく叱られ再入院を言い渡されたのは言うまでもない。 いくら能力を使って傷を治したからと言って全快した訳ではない。文字通り見た目だけの痩せ我慢。むしろあの状態ですら動き回れていた方が不思議な位だった。 「そう言やセラ、仕事は良いのか?」 今更思い出した様に期待した顔で尋ねてくる。 しかし残念、ただのお見舞いじゃないんだな。 「仕事ならちゃんとしてますけど」 「へ?」 絶対安静。外出禁止。 なのにそれを守らないから困るのだ。 「ロイズさんが通常業務は良いから病院で虎徹が何か仕出かさないよう見張っておけと」 「あー……あの人も心配性だねー」 「心配性なんじゃなくて事実でしょ」 ピシャリと足蹴に。 「大体まだ一日も経って無いのに今日、私がドクターから何回注意受けたと思ってる?」 「えぇーと……二回、くらい?」 「残念、五回」 「そんなに?」 バツが悪そうに、けど、多分、反省はしていない顔。子供みたいな大人。いや、違うか。大人で、そして子供。 「入院長引いても知らないよ?」 差し出したウサギの形に剥いた林檎をシャクリと頬張る顔にやっと表情筋が緩む。 キミがいれば希望もそこに 「珍しくちゃんとベッドで寝てるじゃないですか、虎徹さん」 虎徹が再入院を言い渡されたのと同じく、検査入院する様、バーナビーの怪我を見た瞬間有無を言わせぬ凄い剣幕で詰め寄った医者と看護士に流石の彼も首を縦にしか振れず。 昔からヒーロー達が良くお世話になっているせいだろうか。ここの医者達はどうも押しが強いらしい。 「で、どうだった検査の方は」 「虎徹さんほどじゃありませんが結構お小言を貰いましたね。三日間ほど入院しろとの事です」 ウサギ林檎を差し出せばどうも、と会釈と共に一匹拝借。 「ここの医者は心配性っつーかこうと決めたら絶対に曲げないと言うか……」 「同感です」 反対側ではなく私の隣に椅子を持ってきて腰を下ろす。 林檎を交互に手を伸ばしと放り込みつつ、名前を呼び合い本当にどうでもいい様な他愛無い会話をする二人。 それだけで、いや、それが嬉しくてやっぱり破顔せずにはいられない。 (Good things come to those who wait.) (果報は寝て待て) (三人で拳と拳を付き合わせて健闘を讃え合う) (そこにもまた、希望) ---------- 2011,07,01 |