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One today is worth two tomorrow.



「「Trick or Treeeeet !!」」


流石がにこの歳にもなれば平日の仕事終わりに仮装などして出掛けたりはしないが、ハロウィーンに託けて美味しい料理に美味しい酒を親しい友人同士、友人宅で楽しんでもバチは当たらないだろう。
少し長引いたけれどなんとか定時10分過ぎで仕事を終え、ポルナレフを連れ立ってジョースター家の家のドアをノックしてもしもーし。数秒置いて、鬱陶しそうに承太郎がドアを開けるがその顔には微かに笑みが。


「ポルナレフ特製パンプキンケーキのお届けだぜ!」
「ワインもね!」


承太郎は玄関先のコート掛けにコートを掛けるよう二人に促し、ニシシと浮かれた笑顔でずいと差し出されたお手製カップケーキが入れられたバスケットをポルナレフから受け取る。アリシアもワインを手渡しコートを脱ごうとしていると廊下の奥からトトトッと言う足音がかなりの速さで聞こえてくる。


「あ、」
「げっ」


その音の正体にすぐに思い当たり、二人して身構える。


「ワーッ!イギーごめんって!犬用ケーキちゃんとあるか、ら…ギャー突撃して来くんな!」


いつもながらどういう跳躍力で180近い高さまで飛び付いてくるのか不思議でしょうがないが、いつも通り飛び付いてくるイギーを今日はアリシアが顔面でキャッチする。犬のくせに今日はどちらのせいで遅れたかちゃんと分かっているようで、アギアギ、フンスフンス鼻を鳴らしながら予定より少しばかり遅刻してきた事に抗議している。


「パスパス!ポルナレフパス!」
「は!?おいやめろ、うおっ!屁だけはこくなよイギー!?」
「ギャーギャーうるせぇ…近所迷惑だろうが。さっさと家の中に入りやがれ。ジジイが向こうで早くしろってうるせぇんだよ…」
「誰のせいで遅れたと思ってんの!」


ポルナレフを生贄に何とか頭からイギーを引きはがし、鞄から取り出した分厚い資料を承太郎に手渡す。
今朝急に『翻訳を頼んでいた資料だが、明後日使う事になったから今日ウチ来る時に持ってきてくれ』と承太郎からメールが入り、仕方なく仕事の合間、合間に翻訳していたから定時を過ぎ、遅刻したと言うのにこの言い草。流石承太郎である。



One today is worth two tomorrow.



「あー食った食った」
「もう何も食べられなーい」


存分に飲み食いをし気分は上々、木枯らしが冷たくて気持ち良いと感じるくらいにはワインで体が火照っている。
珍しく犬用ケージに入る事を拒否したイギーをコートの中に入れ、緩く巻いたマフラーの間から顔だけ出る様に抱えながらジョースター家から自宅までの道のりを普段よりゆっくりした歩調で歩く。


「やっぱり家族って良いよなぁ。同じバカ騒ぎでもなんかあったかみが違うっつーか」


時刻は深夜零時を回る少し手前。秋から大分冬に近付いてきた夜空は高く、都会ながら星がキラキラと街灯に負けず光り輝いている。


「クリスマスはさ、花京院とホリィさんも日本からこっちに来るって言うし、シェリーちゃんも呼ぼう?」
「おー!そうだな!それが良い!」


私のコートの中でプスプスと寝息を立てはじめたイギーの額を、充分陽気な声を更に嬉しそうに弾ませポルナレフは優しくこちょこちょと撫でる。


「あ、ツェペリさんはどうすんだ」
「シーザー叔父さんにはもう二ヶ月も前からジョセフじぃちゃんが手紙出して熱烈ラブコールしてる」
「ハハハッ!相変わらずだなあの二人は」


仲良過ぎだろまったく、と顔を見合わせ二人で笑い合のだった。



(今日という一日は明日という日の二日分の値打ちがあるんだ)

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2014,12,03