×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


溺れない程度に染まる



「起きろー寝坊助ー」


遮光カーテンを勢いよく開け放たれ、急いで布団の奥底に退散。


「U...urrr..ryy...」
「変な寝言呟いてないで起きろって!」
「もうちょっと…」


逃げ込んだ掛け布団すら剥ぎ取られてしまい、あと、出来ることと言えば芋虫のようにギュッと身を丸めて無防備に頭も尻も全部丸出しで縮こまるだけ。


「往生際の悪い奴だな。コーヒー冷めるぞ」
「んー……コーヒー…」
「そ、コーヒー」


ベッドの縁が深く沈み込むのが分かる。
ボサボサの髪を掻き分け目尻にキス。そして甘めに耳元で『Bonjour』
徐々に覚醒しつつある頭に、ふんわりとコーヒーの良い匂いが鼻先を刺激する。


「コーヒー、こっちに持ってきて…」
「ダーメだ」
「じゃああとじゅっぷん…」
「却下!もう8時過ぎだぞ」


起こそうとするなら逆にポルナレフをこちら側に引き込んでしまえば良いではないか、と腰をホールドしようと伸ばした腕はスルリと躱されボフンと掴む当てを失った腕がベッドにダイブ。


「前に寝ぼけて盛大に零しただろ。染み抜き大変だったんだからな」
「うー……」
「うだうだ言ってないでさっさと起きろ。冷めてもコーヒー淹れ直してやんないぞ」


ようやく観念し、ベッドからゾンビよろしくフラフラと立ち上がりリビングへ向かう。先にキッチンで二人分のマグにコーヒーを注いでいるポルナレフから「ちゃんと顔洗ってこいよー」と母親みたいな指示を受け、本当面倒見が良いなと思いながら素直に従う。
大欠伸をこさえながらまだまだぼーっとした頭と顔をしながら椅子を引き、所定の位置に着席。すぐに挽きたて淹れたてのコーヒーを持ってポルナレフも所定の位置に着席。
どうぞと渡されたマグをどうもといって受け取り、ゆっくり息を吸い込み鼻腔内を香ばしい香りで充分に満たしてから一口、ゴクリ。 最初にほろ苦さが口内に広がり次いで豆の香ばしさ。後味は嫌な苦みを残さないサッパリとした酸味が朝のスッキリとしない頭を覚醒へと向かわせる。


「起きたか?」
「起きた起きた。大分頭がハッキリしてきた」
「お前、本当朝弱いよな」
「起こしてくれる当てがあるとどうもね」
「オレはお前の母ちゃんじゃねーぞ!」
「いやいやウチの母親はこんなに丁寧に起こしてくれないからどっちかって言うと奥さん?」


料理は美味しいし大半の家事はこなしてくれるし妙にエプロンは似合うし。なんて事を真顔で告げれば少し照れた様子。


「それで?本日のご予定は?旦那様」


満更でもないのだろう。ポルナレフは得意げに今日の予定を聞いてくる。



溺れない程度に染まる



今はもう日課になったポルナレフが煎れるコーヒーも、ポルナレフと一緒に住み始める前はコーヒーなんて苦くてまずい飲み物で、断然紅茶派だったのだから随分絆されたな、などとそっと笑みが零れる。



(別段、恋人の居ない事に対して今まで不自由さも劣等感も感じていなかったけど、)
(これはこれで心地好過ぎて末恐ろしい)


----------
2014,11,06