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空を舞う道化師


パリ郊外
漆黒の闇に同じく漆黒の装束を身に纏った一人の女がいた。
しかし女は頭からスッポリとフードを被り、顔は半分以上を黒い布で覆い隠しているのでその表情を読み取る事はできない。



Lost of eden



「隠れてないで出てきたら?」


女の言葉を合図とし、数対のAKUMAが空を覆う。
張り詰めた空気。
行動を起こしたのはAKUMAの方だった。
不快な機械音を鳴らしながら、女めがけて一斉に弾丸を撃ち放つ。
しかし女は地面を蹴り、近くの建物の上へ着地。
標的を失った弾丸は道に突き刺さり、砕けていく。
立ち込める土煙。

女は素早くAKUMAの方に向き直ると、長いチェーンで首から下げている金色に輝く十字架に手を当て囁いた。


「Death clutch」


風が吹き抜けるよりも速く人影が舞う。
刹那、切り裂かれたAKUMA達が砂となり崩れ落ちる。

女は軽く黙祷を奉げると建物の上から飛び降りた。
フードをおろし顔を覆っている黒い布をはずせば、綺麗なミルキーブラウンの髪が流れ落ち、まだ若干幼い面影を残すが整った顔が露になった。


「師匠、任務完了しました」


右に続く路地に向かって女は言葉を投げた。
すると路地から黒縁メガネをかけた男性と、黒い長い髪を高く結い上げた男性が姿を現す。


「よしよし、レイラも強くなったね」


黒縁メガネをかけた初老の男性は、レイラと呼んだ人物にゆっくりと歩み寄り優しい表情でポンポンと頭を撫でた。
そして今度は一変して真剣な表情で話し始めた。


「神田、レイラ、今日で修行も終わりだ。これからは教団での任務を遂行する事になるけど、いいね?」


二人はたったそれだけの言葉で全てを察し、無言で頷いた。


「いい子達だ。それじゃあ気をつけて行っておいで」


師匠からの言葉を背にして二人はパリの街を後にした。
もちろん行き先は『黒の教団本部』



空を舞う道化師



(それは優しく残酷な救世主)

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2006,09,24
2010,03,22加筆修正
神田と主人公の修行時代