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砂の軌跡


何か可笑しいと感じていたんだ。
小さな町に不釣り合いな巨大な教会。
初めから誰も居なかったかの様に何の気配もしない町。
教会から出ようとしなかったAKUMA。
そしてAKUMAが居ることに気付けなかった。



Lost of eden



掌の上に置かれた十字架。
それは相変わらず美しい光を放っている。
呆然と見詰めているとドクンと十字架が脈打った様に感じた。


「えっ…」

「どうかした?」


けれど彼女は何も感じなかったらしく、オレはそのまま「綺麗なロザリオだな」と言ってレイラの首にかけ直した。


「ありがとう」


そう笑ったレイラの横顔に懐かしい様な、切ない様な感情が一瞬湧き、そして消えた。

(…、何、だコレ)



それから二人は元来た廊下を戻り、聖堂へと戻る。
するとそこには街の入り口から二人を教会へと連れてきた小さな少女が一人ぽつんと座っていた。
二人の気配を感じたのか少女は椅子から降りると、広間の一番奥にある巨大なパイプオルガンの方へ歩き出す。

しかし暫らくすると少女はいつの間にかレイラの目の前にいた。
そして少女がスッと右の手を前へ出すと、


「EDEN……」

「えっ?」

「終りなき未来の為の計画。分かたれた記憶が一つ戻る時が来た」


少女はそう言い前へ突き出した右の掌を広げた。
そこから強く白い光が放たれ辺りを包む。
するとレイラのイノセンスが紅くそして熱く脈打ち出した。
そしてそのまま白い光は吸い込まれるようにして十字架の中へと吸い込まれる。
瞬間、あれ程までに大きな教会は硝子が砕ける様にしてその姿消していく。
また、それと同時にレイラの身体がグラリとバランスを崩し倒れ込む。


「おいッレイラ!大丈夫か!?ったく一体何が起きてるんだ」


荒い息遣い、先刻までは赤みを帯びていた頬や唇は、今や血の気は失せ真っ白く冷たかった。
しかしそんな彼女とは裏腹に、彼女のイノセンスは焼けるように熱くまるで何かを主張するように激しくドクドクと脈打つのをやめない。
そう、まるで生きているように…


「しっかりしろ、レイラ!」


あまりに急で、それも現実として受け止めるには困難な出来事だったので、何が起きたのか理解しきれなかった。
歩み寄ってきた少女の掌から白い光が放たれたかと思うと次の瞬間には少女はいなくなり、教会は硝子のように割れて、気が付けばレイラが倒れていた。
ティキはただ必死に名前を呼ぶ事しか出来なかった。

そしてレイラは薄れてゆく意識の中で頭の中に響く声を聞いた。
いや、聞いたと言うより自ら発していた。

”この世界は、まだ存在してる?”

頬を伝う涙。
強く彼女の手を握り締める。
頭の片隅に浮かぶ違和感。



砂の軌跡



(紡ぐ事は出来たけれど、守れなかっ、た)

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2007,08,13
2010,03,22加筆修正