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04



夢を見た。
この国を変えてやる、と意気込んでいた純粋な彼等。いつからか違った途を歩み始めた私達。そのどちらも今、砕かれた。



Dark in the pool



数日間海を彷徨い、気が付けば人気の無い廃れた砂浜に打ち上げられていた。意識を取り戻したとほぼ同時にガバッと飛び起きる。
―――晋助
ふらつく身体でどうにか立ち上がろうとしているとクスリと笑い声が聞こえる。


「沙樹」


焦りと警戒心を隠さないその行動に、可笑しさと愛おしさを感じたのか、とても穏やかな声色で名前を呼ばれる。急いで駆け寄り、高杉の髪に頬に、瞳に、触れる。


「泣くな、莫迦沙樹」


血に霞む右目で真っ直ぐに見詰められる。頬を温かいものが伝い落ち、高杉の頬を濡らした。それを見て、やっと自身が泣いている事に気付く。


「笑え」


溢れ出る涙を指先で拭われ、強くそう諭される。


「俺が最後にこの目に映すのは、お前ぇの笑った面だ。だから笑え、沙樹」


今まで見たことの無い位穏やかな笑顔。それにつられる様に、私は満面の笑みを浮かべる。嗚呼、やっぱり私は貴方の事が好きなんだ。そう改めて強く実感したと同時に、ある決意が胸に生まれる。


「私達が壊してやろうって戦ってきたこの国は、始めっからボロボロに破壊されてた」


落ち着いた口調。そこに憂いや悲愴は無い。


「破壊されたものを破壊するなんて、そんな事出来っこなかったんだ」


冷静な判断。諦めではなく新たな目標と決意。


「晋助、私、この国を――破壊されたこの国を、壊すよ」


以前と同じで、でも全く意味の違う同音語。


「江戸を、徳川幕府を…潰す」


強く生きる、そう求めた。傍にいる、そう決めた。だから私はもう一度だけ修羅になろう。


「好きにしろ。俺ァ死ぬまでテメェの傍に居続ける。ただそれだけだ」


大嫌いなこの世界を大好きな貴方と生きていきたい。だから、だから完全に破壊するんだ。創り直すなんて大仰な事は言えない。だってそれを掲げるには、私達はあまりに血に汚れ過ぎている。でも、創り直す為の礎を用意することなら出来るはず。



逆しまの誓い



未来を生きる為に今を壊す。それは決して正しい事では無いけれど、他に方法を知らないのなら、他にやる人がいないのなら、その途を、貫くしか無いんだ。


(貴方の意志を継ぐ)
(御前の意思を継ぐ)
(破壊者の傍らに、)


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2010.02.25