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12



某日未明、海上、陸上から攻める桂一派と空から攻める陸奥ら率いる快援隊、全ての軍艦と陣が配置に着き、日の出と共に一斉攻撃が開始された。何の情報も得られぬまま、江戸は戦火に塗れてゆく。
幕吏共は勿論、天導衆ら幕府中枢に巣喰う天人すら一人残らず例外無く討ち取られる。
全てがこの日の為に、皆、各々の限界を超え刀を槍を銃を振るう。行けと、討てと、壊せと空が、風が、大気が叫ぶ。天人を含む一切の幕僚の反撃する隙を与えない。意志を持たぬ軍や警察は何の役にも立たず、歳も性別も生まれも感性も何もかもがバラバラな浪士の集まりに次々に降伏させられてゆく。
これが日ノ本に生きる"武士"の覚悟。
これが日ノ本を憂う"侍"の魂。



Dark in the pool



日が暮れる頃にはすっかり戦の火は静かになっていた。
江戸幕府崩壊。
たった一日足らずで、百年の長きに渡り日本の頂点に君臨し続けた城は、崩れ去った。呆気ないと言えばそれまでだが、誰もこの現実をそうは思わない。
永かったのだ。
親を失い、友を失い、子を失い。果ては身体を失い、己すら失った。それでも尚、立ち上がり、刀を握り前を向いて歩むのは、"さぶらひ" だから。





「本当にやりやがった……」


短くなりすぎた煙草のフィルターを摘み、煙りを空へ放つ。実質、解体となった真選組は残り僅かな人数で江戸城下から離れた山林の中に野営を張り、夜を明かしていた。


「行きやしょう、土方さん」


あの日、幕府から呼び出しを受けた近藤を江戸城に一人で向かわせた。その事が今、北に向かう足を遅める。とっつぁんも居るから大丈夫だ、と皆に言い聞かせるが、この現状でそれを百パーセント信じ切る事は誰も出来なかった。


「こんな所でグズグズしてても仕方がないでしょう。それこそ近藤さんに合わせる顔が無いってもんでィ」
「総悟、お前……」
「あーあ、雨が降って来ちまいやしたねェ。こりゃァ目の前が滲んで仕方ねェや…」



維新



空でも海でもない。地上部隊の最先で地に脚を着けた鬼が道を創る。その気迫、正しく血に飢えた獣が如し。躊躇いを知らず加減を知らず、敵を破壊する。
後の世で維新戦争と呼ばれるこの戦で、鬼兵隊総督、高杉晋助として私は刀を振るった。


(激動の中で生き抜く)
(己が魂の示すが儘に…)


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2010,05,19